序曲『スカウト』 ページ1
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なにを探しているのかと聞かれると返答にいつも迷う。
明日、とか、光、とか、格好つけて答えることもできるけどそれはやっぱり違う気もして。
じゃあもっと単純に誰を探してるのかと聞かれると、それはそれで返事に困る。
たぶん私自身も自分が探している相手が誰なのかよくわかっていないからだ。
あるいは言い換えよう。
自分にとってなんなのかが、私はいまだにわかっていない。
「すみません、手掛かりもつかめませんでした」
「……そうですか」
「成功報酬制なので、お金は結構です」
「……わかりました。ありがとうございます」
その人は男である。
何も聞いてこないが、依頼をした興信所の人間なんかは恋人に愛想をつかされた可哀そうな女とでも思っているのだろう私のことを。
いや、それは偏見か。
まぁでも、あながちそれも間違ってはいない。
現にあの人は私の前からいなくなってしまったのだから。
仕事へ向かういつもの道。
空は曇り。
私の心も、わけわからない靄のようなものが薄くかかったままだ。
私にとってあの人は何だったのか。
近しい答えが二つある。
父親、あるいは恋人。
だけどどっちも近しいだけで正しくはないと私は思う。
正確に言い表すのならば、やはり。
「はじめての男」
うん、これしかない気がする。
私にとってあの人は、さまざまなはじめてをくれた人なのだ。
今日もこの世界のどこかで息をしていればいい。
どこかで野垂れ死んでいたとしても手を合わせに行く義理なんてないけれど。
……義理くらいはあるか。
でも、それは出て行った向こうが悪いし。
だからまぁ要するに、今日もあの人を見つけることはできなかったわけだ。
最早なんで探しているのかもわからないくらいなのに。
何もわからなかったと言われるとため息を吐きたくなってしまうのはなんでだろう。
それすらもまた、あの人が私の「はじめての男」であるせいに違いないと思うのだ。
なんて、いつまでも考えていても仕方がない。
邪念があれば音が乱れる。
音が乱れれば気分が悪い。
だから、あの人のことなんて忘れてしまうのが正解なんだ。
わかっている。
わかっているのに。
鮮やかに焼き付いて離れない。
はやくわすれてしまいたいのに。
早くあの人を忘れたくて、私は必死に消えたあの人を探しているのだろうか。
あぁ、やめよう。
お店に着いてしまう。
考え事は終わり。
今日もただ音を奏でる時間だ。
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iCHiKA(プロフ) - のりさん» のり様、お久しぶりです！お待たせしてました、久々の今回は「キスしたいだけ」でございます。こちらこそ今回もありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。お楽しみいただければ良いのですが。今回もぜひ最後までよろしくお願いしますね！ (2021年9月8日 21時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - キタ。今回はキスをしたいだけのお話なんですね。しかも思いがけず長編連載。ありがとうございますm(__)m 既に続きが楽しみすぎです。あ、こんにちは。お疲れ様です。余談ですが私にも亜由ちゃん同様カワイ子ちゃん(3人)がいますw (2021年9月8日 16時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年9月4日 16時
