君を連れってってあげるよ ページ16
『本当に?』
真っ先に出てきたのはその言葉だった。気を引くために大袈裟に言ってるだけなんだろうと。
「本当だよ! ボクに歌えない歌は無いのさ。例えばね___」
と、どこからともなくライアーを取り出し、繊細な爪弾きで弾き語る。
「___かつて、このテイワットを治める七神の他にもう一人神がいた...」
『! その物語は』
「覚えがあるでしょ?」
音を響かせながら複雑なメロディで曲を奏でていく。
「____、どうだい?」
一通り演奏し終わり、彼は僕に問う。
『どうして、その話を知ってるんだ?』
この話は、彼ら兄弟から聞いた通りなら単なる僕の作り話なはず。
「言ったでしょ? ボクに語れない物語は無いんだって」
読めない、そう思った。
『...僕に会いに来た理由は?』
「友達に会いに行くのに理由なんているのかい? なんたって僕はモンドで一番の古株だよ」
間髪入れずにそう答えた。
古株ってマジ? 見た目に反して実年齢は結構いってるのか?
「でも、強いて理由を作るなら」
彼はライアーに目を見やりながら声を絞り出す。
「君とモンドを歩きたいんだ」
「早く思い出して貰えるようにね」
そう言って笑う彼は、一瞬物悲し気に見えた。本当に一瞬だけど。
「君の事なら、この地で誰よりも詳しいボクが一緒に記憶探しをしてあげるんだよ。こんなに良いことはないでしょ?」
ね? と僕の手を掴んで見上げてくる。
『...わかったよ。案内よろしくね、ウェンティ』
それを聞くとパァと目を輝かせた。
「勿論、君ならそう言ってくれると信じてたよ!」
そうして僕の手がもげるってくらいブンブン振り回して嬉しそうにしてた。
〜〜〜〜〜
「あ、そこ躓かないようにね」
『大丈夫だって』
モンドを回る道中、ウェンティはずっとこんな感じだった。
「だって心配なんだよ。君って昔から抜けてるところあるから」
『う、』
僕ってば昔からそんななのか...
『それにしたって手を繋ぐのはやりすぎだろ!』
さっきから道行く人に視線が気になって気になって仕方ない、恥ずかしすぎる...
「こうでもしないと、君はまたどこかに行っちゃうでしょ?...あ」
思いついた! と歩みを止めて僕を見る。
「君が一番気に入ってた場所に連れて行ってあげるよ、捕まっててね」
足元から風が舞いはじめ、身体がどんどん浮いていく。
「ふふっ、走るより飛んだ方が速いよ」
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ぽんぴー - 数少ない原神BLありがたやありがたや。。そして面白いです。更新がんばってください!!!!! (2022年7月27日 2時) (レス) @page14 id: 0eb447a2e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎのくろた | 作成日時:2022年7月26日 0時