わたあめ【坂田銀時】 ページ5
「おじさん、わたあめ一つ。」
「ほいよ。」
渡されたわたあめを頬張りながら、歩きづらい下駄を音を立てて引きずりながら歩く私の隣にはめんどくさそーに鼻をほじる銀時がいる。
どうしてもお祭りに行ってみたい、という私に賛同してくれたのは万事屋の中では誰もいなかった。神楽も新八も一回行ったからもう十分だ、というのだ。
銀時なんかは論外で、「1人で行ってこいよ。」なんて言われたのだ。
そんな言われようだったから、いじけて「分かった!」と家を飛び出してきた私。ほっといてくれればいいのに、神楽から何か言われたのか、息を切らして私の元まで追いついてきた。
だけれども、未だにガン無視だ。
「なー、Aー。一口くれよ。」
万年金欠の万事屋の皆さんとは違って、一応私は職についている。だけれども住む家がなかったから、家賃を払って住まわせてもらっているのだ。
つまり、三人の収入といえばほぼ私の家賃というわけだ。
無視をして、銀時から見えないように、べっ、と舌を出す。少しくらい付き合ってくれてもいいのに、と子供みたいに拗ねる。
いいじゃないか、一度くらい行ってみたかったのだ。祭りとやらに。
去年、仕事で行けなかった私の分まで満喫してきた三人をみて、今年はどうしても行きたかった。だから無理やりにでも休みを取ったというのに。
なんて薄情な奴らなんだ、と半分くらいになったわたあめを振り回す。
「っと、」
「ちょいちょいねーちゃん。俺の服にわたあめ着いたんだけど⁉」
「あ、すみません。」と深々と頭を下げる私とは対照的に難癖をつけてくるちゃらそーな男。どうしたものかと困っていれば、肩に手を回される。
「クリーニング代、体でもいいんだよ?」
ぞわっ、と背中をムカデが走ったような感覚だった。こんなキモいこと言うやつまだいたんだ、と悠長に思っていた。
だけど、ふわふわふわふわと割り箸の先についた白いものが私の目の前を横切ったと思えば、肩を回していたその男の顔面に直撃した。
「わりぃな、そのねーちゃん俺のなんだよ。」
それだけ言うと、顔面についたわたあめはそのままで、私の手を引いて、銀時は走り出した。
ふわふわ、わたあめみたいに気まぐれなやつ、こんなやつかっこいいと思ったら負けだ。
そう思ってる時点でもうやばいことは私が一番よくわかっているのだ。
わたあめ男、銀時めー
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作者名:咲 | 作成日時:2019年6月16日 2時