104.寒煖饑飽 ページ8
「…おい新八ぃ、冷蔵庫からいちご牛乳とってくれ。」
「ワタシ冷たいアイスクリーム。」
「自分らでとってくださいよ。そうでなくてもただ二人ともゴロゴロしてるだけなんですから。」
「全く…」とため息を盛大について、かご一杯に入った洗濯物をベランダにもっていく新八を横目に俺は重い腰を上げた。のそりのそりと歩き、冷蔵庫を開ければひんやりとした空気が流れ出てくる。
「銀ちゃん、アイス。」
立ち上がった俺をいいことに神楽は片手をあげた。俺はいちご牛乳でのどを潤した後、仕方なく冷凍庫を開けた。しかしそこにあるのはカチカチに冷やされた大量のアイスノンだけである。
「…れ?神楽、アイス一つもねーぞ。」
「嘘ネ!ワタシ一昨日にいっぱい買ってそこに入れたモン!」
「そのアイスを1日で平らげたでしょ、神楽ちゃん。」
「忘れたの?」と新八は冷たい目で神楽を見つめた。おそらく新八個人で買ったものまで食べてしまったのだろう。いつものこととは言えどもさすがに新八も今の発言にはただただ呆れた顔を見せるだけだ。
パタン、と冷凍庫を閉める。流れ出ていた冷気が止まり、俺はほんの少しほっとした。寒さがあの日の夜のことを思い出させるのか、首をぶんぶんと振った。とりあえず今のヒットポイントはゼロである。
「銀ちゃん、アイス買いたいアル。」
「金がねぇよ…」
「そもそもなんでAの仕事なくなったアルカ?それのせいで今私たちまた毎日卵かけご飯アル!」
つい一昨日までこんな寒い冬の中、アイス大量に買ってたやつが何言ってんだか、と俺は騒ぐ神楽を無視して、先ほどと同じようにソファに寝転んだ。ジャンプを開くが、まだ今週号を買えていなくてもう3度ほど読んだページをまた繰り返している。
「でもほんとに…どうして急に橘さんの仕事なくなっちゃったんですか、銀さん。」
「…知らね…。」
「どうせ銀ちゃんが我慢できなくなって手でも出したアルヨ。あぁ、やだやだこれだから男は。」
あながち間違いでない神楽のその発言に俺はドキリと心臓が鳴ったが、どうやらその様子は2人には気づかれていないようだった。「そうだな。」と適当に相槌を打てば「もう…。」とあきれたように言葉を漏らした新八だったが、それ以上は何も言ってこなかった。
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narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる!楽しみにしてます! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……! 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております! (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2021年2月1日 20時