112.怒髪衝天 ページ16
「たでぇまー…」
無気力にそう玄関に告げると「おかえりなさい。」と顔を出したのは新八だった。
あいつとのやりとりがなくなってからいつもの日常が戻ってきた。てんで依頼が入らないお金不足の毎日だ。
それでもジャンプを毎週買いに行く俺に神楽がキレたのは昨日のことで。まだ怒っているのか今日は一度も押入れから顔を出さない。
「神楽は…」
新八にそっと尋ねてみたけれども、ただ首を振っただけだった。俺ははぁーっと長いため息をつくとなけなしの金で買ってきた酢昆布をビニール袋からガサガサと取り出した。
一個86円。それを3つ、合計で258円。たったそれだけでも俺たちの今後の生活は割と苦渋になってくるが、致し方ない。
俺はコンコン、と控えめに押入れを叩いたが、無論返事はなかった。というか死んでるんじゃないか？というくらい静かすぎて物音一つしない。
割と古めの家だから、神楽が少しでも動けば木が軋む音くらいすぐすると思うのだが。
「かぐらぁ…」
そっと押し入れを開けて、小さな隙間からガサリと酢昆布の入ったビニール袋を見せる。「これ買ってきたから機嫌なおせよ。」とビニール袋を振ってみるも、何も反応がなく。
数分ほどじっとそのまま待っていたのだが、あまりにも返事がないので俺も少しイラッとして「いい加減にしろよ！そんな不貞腐れてても金は出てこねーぞ！」とスパン！と扉を開けた。
「…あ？」
だけれどもそこには誰の姿もなく。綺麗に折り畳まれた布団があるだけで、なんの気配すらもしない。
「神楽？」
そっと頭を突っ込んで中を覗いてみるけれども勿論こんな狭い押入れはすぐそこに壁があって。覗き込んでいる俺に「銀さん神楽ちゃんどうですか？」と新八が声をかけてきた。
「いねぇ…」
「は？僕ずっと家にいたけど出かけた気配なんてなかったですよ？」
新八は眉間に皺を寄せて「どこ行ったんだろ…」と呟いた。そう、今いないということは神楽は早朝、どこかに出かけたに違いない。
嫌な予感が頭を掠めたが、どうにも探しに行く気に、というか外に出る気になれず、「まあ、夜まで待ってみようぜ。」と新八に言った。
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narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています！ (2021年2月15日 20時) (
レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる！楽しみにしてます！ (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……！ 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております！ (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲 | 作成日時：2021年2月1日 20時
