109.無茶苦茶 ページ13
ぶすっとした顔で俺の横に座った彼女は「はい。」とコーヒーを差し出した。しかしそれ以降何かを言ってくるわけでもなく沈黙が続いた。
俺はもうすでにどうしたらよいのか分からなくなっていたため、考えるのをやめていた。ぼうっと空を見上げていれば、ポンっと足にボールが当たった。
「す、すみません…。」
恐る恐る声をかけてきたのは10歳くらいのガキで。俺はそのボールを手にとって「ほらよ。」と投げて渡せばガキは、「あ、あ、ありがとうございます!」と言いつつも逃げるように去っていった。
「俺はそんなに怖いか…?」
ぶつぶつつぶやくように言えば、ようやく口を開いた彼女は「ぷっ、」とはきだした。そしてアハハ!と笑った。
その笑い声に少しびっくりした俺が目を見開いて彼女を見つめていると、「ちょっと、そんなに見ないでくださいよ。」とまだ半笑いで俺の肩をたたいた。
「あー…おかしい。」
「なんだよ、俺はそんなに怖いのかよ?」
「まあ、目つき悪いから…私が子供で、土方さんの性格とか知らなかったら同じ反応してたと思いますよ。」
「お手本のような態度ですね。」と彼女は目にたまった涙を服の袖で拭いた。確かに昔から目つきが悪い、瞳孔が開いている、など色々言われてきた。そんな風に見えていることは多少理解していたつもりだったが、そんなところではなかったらしい。
認識を改めなければいけないな、と思いつつ、でもなぜ俺が認識を変えなければいけないのか。そもそも俺は別に何かをしたわけでは…ない。特に子供に対しては。大人だったなら、真選組副長ということで避けられることもあるかもしれないが。
それにしてもあんなにあからさまな態度は久しぶりだったからからしくもなく戸惑ってしまった。今度は俺が少し不機嫌そうに腕を組んだ。何も言わなくなった俺に彼女はやっと「土方さん?」と声をかけた。
「…なんだよ。」
「私は怖くないですよ?土方さん。意外と優しいですもんね?」
「俺に媚び売っても無駄だぞ。」
「そんな。なんで私が土方さんに媚びを売る必要があるんです?」
「心外です。」と笑った彼女に俺はちらりと視線を向けるとぱちりと目が合う。焦って「け、結婚したいから…とか?」と本気でらしくもないことを言ってしまえば、彼女はきょとんとした顔で。
やばい、と思ったが、彼女は「うーん。」と腕を組むと「じゃあ、結婚します?」と流れるように言った。
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narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる!楽しみにしてます! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……! 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております! (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲 | 作成日時:2021年2月1日 20時