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108.時期尚早 ページ12

そもそも俺、土方十四郎は鬼の副長とまで言われた男だ。何がそうさせているのかは、巷ではもちろん、自分自身でも重々に理解している。

「れ?土方さん、仕事ほっぽりだしてどこいくんでぃ。」
「有休とった、勝手だろ。」

真っ黒な制服から藍色の着流しに着替え、屯所から出ようとしたところ、めんどくさいやつにつかまってしまった。にやりと笑った総悟は「おせっかいもほどほどにしといた方がいいですぜ。」と一言だけいうと、そのまま背を向けた。その一言も余計だっつーの、と思いながらも、玄関を開けて一歩踏み出した。


目指すは万事屋である。

こんな日がまた来るなんてなぁ、と少し悔しさを覚えた。しかし、最初に自分で万事屋に赴いた日は自身の意思ではなく、ヘタレオタクトッシーによるものだったため、ノーカウントにしてもいいかもしれない。

だがそうすれば、今日が初めてのそういう日になる。それなら2回目のほうがましか、いや、結局どう気持ちに決着をつけようとも納得がいかないことは確かだ。こんな不毛な話はやめよう。

タバコに火をつけると、ゆらゆらとその煙は冷たい風に吹かれて副流煙をまき散らす。最近めっきりタバコを吸う人が減ってしまったからか、路上での歩きタバコにささる視線は痛い。いつもは隊服だから絡まれないだけだろう。



−…げ−

寒さに耐えながら、ゆるく巻いていたマフラーを巻きなおそうと手を挙げた時だった。こっちをじっと目を見開いてみている奴がいる。しかもそれが先ほど強引に追い出した彼女なのだから、俺は逃げるしかない。

くるっ、と背を向けた瞬間、「土方さん!」と声をかけられてしまう。なんだって俺がこんな目に合わなければいけないのか。とりあえず声までかけられて、逃げるのは得策ではないな、と判断し直し、彼女の方に目を向ければ、眉間に皺を寄せて何か言いたそうに立っている。

ずんずんと近づいてくると「仕事は?」と少し強めの口調で尋ねられた。

「だから…有休…」
「ほんとにとったんですか?この時間から?勿体ない。」
「俺の勝手だろ。それよりお前なんでまだこんなところにいるんだよ。」
「それも私の勝手です。それよりそんな暇なら付き合ってくれます?」

「あなたのせいで私も有休とらされたんですよ?貴重な有休を。」と口をとがらせて言う彼女。「ん。」と近くの公園を指さして歩き出した彼女に、もうついていくしか選択肢がなかった。

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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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narumi(プロフ) - いつと楽しく読ませてもらっています(*^^*)とても続きが気になります♪応援しています! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 5cd2b1b9c5 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 続き気になる!楽しみにしてます! (2021年2月3日 15時) (レス) id: 9be2d294c2 (このIDを非表示/違反報告)
気空(プロフ) - とても素敵なお話でシリーズ一気読みしてしまいました……! 夢主と銀さんの絶妙な距離感の変化がたまらんです。こういう夢主ちゃんあまり見かけないので巡り会えて嬉しい……陰ながら応援しております! (2021年2月3日 7時) (レス) id: 413d1f6892 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年2月1日 20時

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