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赤【坂田銀時】1 ページ10

「お、お邪魔します…。」

おずおずと坂田さんの後に続いて万事屋の玄関をくぐる。少しカビついた古い感じの匂いが私は好きだった。

銀 「悪りぃな、こんなとこまできてもらって。」

「いえいえ!私、暇人ですから!暇してますから!全然大丈夫です!」

銀 「それ全部銀さんに返ってくるんだけど…。」

特徴の銀髪の天パを少し揺らしながら坂田さんはどすどすと部屋の中に入っていった。私は少しだけ緊張しつつも、深呼吸してその部屋に踏み入った。



つまるところ、私は坂田さんが好きである。


「坂田さんって、いつもここでなになさってるんですか?」

銀 「なにって、あれだよあれ。仕事だ仕事。ジャンプ読むっていう…」

「え、ジャンプ…?」

ガシガシと頭をかきながら、私の返事は聞こえなかったのか、聞こえなかったふりをしたのか「ねぇなあ…。」とつぶやきならガサゴソと棚の中をあさくっている。

これはまた、悪い時にお邪魔してしまっただろうか。

「あの、出直しましょうか?私。」

胸に抱える風呂敷を先ほどよりも少しだけ強め握りしめた。今日じゃなくても大丈夫なはずだ。

銀 「だめだ。どうせ少しくらい遅くなってもとか思ってるだろ?あーゆーのはしつけぇんだ。」

そう言うと坂田さんは次は違う戸棚をゴソゴソと漁り始めた。私はと言うと確信を突かれ、でも他人のうちであるがゆえになにもできず。

ただぼうっと突っ立っていることしかできなかった。

銀 「そういやなんで今更親戚の奴らはその着物をくれなんて言ってきたんだ?」

坂田さんは未だに戸棚を漁りながらも私にそう尋ねた。私はもう一度ぎゅっと風呂敷を握った。中には大事なお母さんの着物が入っている。

「どこから聞いたか知らないんですけど、この着物がすごく高いことを知ったみたいで。私と同じ年の従兄弟の子知ってますよね?その子がどうしても欲しいって言うんですって…。」

「ああ…あのチビか…」なんて呟く坂田さん。失礼なことを言われているとはわかっているけれども正直私は親戚の人たちが苦手だ。

この着物を持って出ていってしまったからにはもう戻ることもできない。

「……母の形見なんです。」

意識もしていなかったけれど頬から流れ出たのは涙だった。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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