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綺麗になった女の髪をときながら神威は上機嫌だった。人形のようにドレッサーの前に座らされた女は戸惑うばかりである。

神 「ふーん、意外と綺麗な髪の毛だね。勿体無いね。」

髪の毛をひと束すくい上げ、顔を隠すように覆っていた前髪をあげてみる。そこでやっと鏡越しに女と目が合う。

「…あなたは、どうして、そんなに、優しいの…?」

黒い瞳をより大きくさせた女に神威はニッコリと笑う。

神 「優しい?俺が?そんなの今だけだよ。」

「いつかは君も殺すんだから。」と笑顔のまま続ける神威。神威は女が怯える顔を見せるのを待っていた。案の定、女はポロリと涙をこぼした。

神 「怖いの?でも君は奴 隷として売られていたんだろう?どうされようと俺の勝手だよ。」

いつもの調子でズケズケと物を言いながら女の髪をとかし続ける神威。

「違う…。違います…。怖くなんかありません。それは百も承知でここにきています。」

女は止まらない涙をぬぐいながらそういう。ゴシゴシと目をこすりながら女は顔を上げた。

「それでも、今は優しいあなたの手が私に触れるから。その手が何故か暖かいから。…嬉しいの。」

神威はピタリと思わず手を止めてしまう。そんなことを言われるとは思ってもみなかったからだ。


「あなたはお日様みたいね。私の光よ。」

「こんな身分でずうずうしいけど。」と笑った彼女に思わず神威は目を奪われる。

自分のことなんて何にもわかっていないくせに。きっといつか俺の怖さがわかって離れて行くに決まっているのに。怯えた目を見せてくるはずなのに。

それなのに。

「今だけでも暖かくて幸せ。」

そういう彼女に神威は髪をとく手さえ動かせずにいた。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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