CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ42)

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「今日は何するん？」

実験室、私の横に座りながら聞いてきた彼。私の返答によっては『じゃあ腕出して』と言うつもりなのだろう。…先の冷静な一面を見せるという話は撤回してもいいかもしれない。

案の定、今日は薬を計量しながら調合を行うことを告げると「量ってる間はええ？」と聞いてきたのである。

まあ、何にしろ一度拒否しても駄々をこねるので問答無用で許可するしかないのだ。段々彼らの扱い方がわかってきた。彼には断る際には代わりに何かを与える、もしくは条件付きの方がいい。

「…やっぱ甘いな、何でやろ」
「……何ででしょうね。人間から甘い味がするとか、糖分が表皮から出てる訳じゃあるまいし」

血液を少しだけうらたさんに分けて、調べてもらっているもののまだまだ真相にはたどり着けそうにないらしく。彼は知的好奇心が刺激されると共に、解決していない疑問が立て続けに増えたことに対して嬉しいのか悔しいのかよくわからない表情をしていた。

坂田さんの机に突っ伏すようにしながら私の腕をもぐ、と食んでいる姿はここ数日で見慣れてしまった気がする。異様なものに違いは無いのだが。

「それ、次の実験で使うやつ？」
「そうです。…実験結果によって使う薬品を変えてますけど、まだまだ道のりは遠そうなんですよね」

「うらさんも苦戦しとったもんなぁ」と私から視線を外してつぶやいた彼は、恐らくうらたさんのことを思い出しているのだろう。彼と手分けして試薬、中毒物質の特定を急いでいるものの、これといって確実なものが見つかったという訳ではなく。

溜息を吐きかけて、自分が今粉末状の薬品を持っていることに気付いてそれをやめた。そうだな、後でマスクをすることにしよう。

隣の彼は私が少しだけ眉間にしわを寄せたことに気付いたのか、視線を私と空中にさ迷わせて戸惑っている様子。…私が機嫌を悪くした、という程ではないが、少し感情が悪い方向へ向かったことを自分の責任だと思っているようだ。こういう優しいところが、彼を無下にできない一つの理由である。

「…えと、あのな、そういや、やねんけど」

下手な話題転換に少し笑いかけて、彼に「なんですか？」となるべく優しい声色で言葉を返す。彼は私の表情を伺いながら、ゆっくりと言葉をこぼし始めた。