CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ22)

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「...せ、センラさんは食べないんですか？ご飯」

じっと向けられた視線がこそばゆくて、恥ずかしくて視線を逸らし、煮物に目を向けながら言った言葉。

「...ん、あぁ、僕らは人間やないんで、食べんくても大丈夫なんですよ」

その驚愕の事実に再度彼に視線を戻すことになる。今、なんと言った？私の聞き間違いでなければ、人間ではないと言ったか？

じっと彼の姿を凝視する。綺麗な色の髪、瞳、通った鼻筋、形の良い唇。薄い色の肌に腕から指先だって。胴から長い足、目に見える部分は全て人間を構成するモノ、その筈だが。

いや、確かに人の形をしたヒトではないものは存在する。それこそ、存在はするものの今はあまり姿を見せなくなった"神"だってそうだ。

...いや、むしろヒトではない方が合点が行くかもしれない。あの並外れた身体能力がこの細い身体のどこから出力されるものなのか、甚だしく疑問であった。

私を横抱きにして長時間走った事や、片手で私を持ち上げたことなど。通常の人間であれば有り得ない芸当の数々。

「...なるほど」
「...なんでか納得されてますけど、僕らなんか変な事でもしましたっけ」
「あぁ、いえ、......いや、特に。そりゃあんな無茶なことするよなあ、って。...と、じゃあ、ヒトじゃないなら？」

何なのだろうか。
『変な事』の定義が彼と私では違うような気がしたから、別に問題提起はしなかったけれど。
人型の、かつ耳や尻尾等も人間と特に変わりはない彼ら。思い当たる種族は沢山あれど──特にこれといってピンと来るものはない。

目の前の彼は、「あー...」と目を逸らして何か言いづらそうにしているが。何か問題でもあるのだろうか、と考えてハッとする。

「す、すみません、私。あんまりデリカシー無かったですよね？ヒトばかりいる所でずっと生きてきたので...」
「あー、いえいえ、いや、大丈夫なんです、大丈夫です」

種族の追求、言及はタブーだ、恐らく。私は人間のみが暮らす孤児院、研究室に勤務していたからあまり身近ではないが、多種族が生きる社会だとあまり触れることは良くないこととされていると、どこかの文献で読んだような。

出身地を明かす事はあれど、自らの種族を明かすことはあまりないらしい。それこそ緊急時のみだ。それは自らの種族としての希少価値が高ければ高いほど、自らを危険に晒すことになるから。