CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ20)

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3.最初の晩餐ページ20

私の後ろで『もう今日はおしまい！』とでも言うように、センラさんは手を一回パン、と叩いた。

早口にまくし立てるようなその言葉に唖然とし、ぽかんと口を開けていると、彼は再度私に「お腹、空いてません？」と聞いてきた。

ニッコリ。
その『お腹空いてると言え』とでも言うような表情に、思わずこくこくと頷く。彼は満足したかのように笑顔で頷くと、私の手を引いてソファから立ち上がらせた。

「ほら、やっぱり。Aさんお腹すいてるらしいから、ご飯にしてくるわ」
「お前今無理矢理頷かせただろ」
「えぇ〜Aちゃん連れていくん？」

彼に手を引かれ部屋を後にする。後ろから野次が飛んでいるが、それを全く気にしない様子で彼はどんどん歩みを進めた。

そして連れてこられたのはキッチン、らしき場所。彼は近くにあったテーブルクロス等がきちんと準備されているテーブルの近くに私を誘導し、椅子を引いて「どうぞ」と微笑んだ。まるで三つ星レストランでされるようなその優雅な動作に少し動揺しつつ、素直に椅子の前に移動すると椅子をこちらへと押した。

ストン、と腰を落とすと彼は「とりあえず今あるもんで簡単なもの作りますわ」と言い、冷蔵庫の扉を開けた。少し遠くにあるそれをこちらから覗き込む。…あまり中身があるようには見えないけれど。

「なんか好きなもんとか嫌いなもんとかあります？」
「あー、いえ、特には…」

はっきりとしない、濁した返答。
事実、あまり食生活にこだわりがあるという訳ではないのだ。孤児院時代は出されたものを素直に食べていたし、研究室に配属されて一人暮らしを始めてからも自炊等はあまりしてこなかった性質だ。

『食の好みは特にない』という私の返答に対して、彼は「じゃあとりあえず、簡単なもん作りますね」と冷蔵庫の中を覗きながら言った。ラックに掛けてあったエプロンを慣れたように付ける様は、彼が料理をよくするという事を裏付けているかのようで。

エプロンが一枚だけ掛けてある、ということは彼しか料理をしないのだろうか。というか、ご飯を食べることをすんなりと了承してしまったが。彼は何を振舞ってくれるのだろうか。

...変なものでなければいいが。

あの四面楚歌のような空間から無理矢理連れ出してくれたことに感謝はすれど、彼のことを信用している訳では無い。

座った状態でも見える手元やリズム感良く食材が刻まれる音を聞きながら、少し本当にお腹が空いたなど断じて思っていない。