CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？【utit】 (ページ16)

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「──それで、私を連れてきたと」
「そんなとこ。...で、どう？事件解決に協力してくれる？」

ニッコリと顔に貼り付けたような笑みを浮かべた目の前の彼。"イエス以外は却下"といった雰囲気を感じる。
断るという選択肢は無いのだろう。

...ただ、現在の彼らが苦悩している状況から脱し、人々を救う鍵となれる可能性がただそこに存在しているという事に。
今この瞬間は仕事ではないが、今まで携わってきた『命を救う手助けをする』という事に対して。

少し、協力的になってしまうのは職業病というものなのだろうか。

「...わかりました。原因究明と特効薬開発に協力しましょう」
「話が早くて助かる。じゃあ、一時的に協力体制を築くということで」

貼り付けたような笑みから少し表情を崩した目の前の彼。心なしか安堵したような表情に見える、ような。
私も肩の力が抜け、ソファに体重を預けようとしたその時。後ろに回した手首、拘束されていたそこからカチャリ、と金属が回る音がして。

「手錠、外しました。ごめんなさいね、手首、痛くないですか？」

するり。軽く手首を指先でなぞられる。少し驚いて、自由になった手を思わず自らの正面にすぐさま回してしまったが、心配してくれた彼に対して少し失礼にあたるかと思いそのまま腕を下ろした。
「大丈夫、です」と彼の言葉に返事をすると、安心したようにまた彼は微笑んだ。

...初対面の時のあの表情といい、先程の、目の前の茶髪の彼が言った言葉。
『何故か後ろのヤツがアンタに懐いてて手出せねーの』...これも。彼に敵意がない、むしろ好意があるのは背水の陣中の希望と言えるだろう、けれど。
理解のできないことに対して、人間は恐怖を覚える。

つまり。
理由の不明な好意ほど不気味なものはない。

少し慄きつつも、違和感の無いように彼から視線を逸らす。この一瞬、少しだけ空間が静まり返った空気をどうにかしてくれと正面に座っている彼を見ると。

「じゃあ、協力関係を結ぶにあたって。名前言ってなかったしちゃんと名乗っとくか」

...助かる。一番オーソドックスな流れだ。どうせ私は拉致された人間として共同生活を送ることになるのだろうから、ちゃんと名前を覚えておかないとな。