CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ1)

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8.夢、うつつページ1

「私、夢魔じゃないみたいです」

そう言うと彼は「まあ、そうでしょうね」と、驚きも何もない口ぶり。なんだ、新しい事実が明らかになった──というより疑惑が否定されただけだが──のに、特にリアクションの無い彼。

…少し私が残念そうな顔をしていたのか、ちょっと困った顔をして、彼は咳ばらいを一つして。

「…へぇ～！そうなんですか！いや僕もちょっと同じ血流れてるんちゃうかな～って思っとったんやけどなぁ～！」
「……すみません、センラさん。無理しなくて大丈夫です」

あはは、と笑った彼。なんでも応えてくれるからといって無茶ぶりをしていいわけではない。そのことを反省しつつ、何故"夢魔ではなかった"ことを当然のように受け入れたのかを聞くと。

「うーん、何ででしょう。…まあ、体内で不都合が起きる物質を消去する作用が働いてるんやったら、夢魔特有の中毒物質の生成が阻害されて喧嘩するから、そもそも夢魔である筈がない、とかですかね」
「おぉ、大体正解、のような？」

私が用意していたものより複雑な回答が帰ってきたけれど。大体あっていることに間違いは無い。そう、先日うらたさんから私の正体についての回答を聞いたのだ。

「夢魔特有のフェロモンが血液から出てこなかったから、みたいですよ」
「あぁ、うらたんに調べてもらっとったやつ、結果出たんですね」

それもご名答である。「大体予想通りではあるんですよね」と言った彼に頷きつつ、疑惑や疑念、可能性が出ても否定されていく結果達に少し残念な気持ちになる。

それはここに来た当初から行っている、あの"粗悪品"の中毒物質を特定することに関しても同様で──数週間経った今も、未だにこれと言って明確な手掛かりが掴めたという訳ではなかった。

今すぐ傍にいる彼は「あんまり無理しすぎんとってくださいね」と度々休むことを勧めてくるが。そうも言っていられない日数が経っているのだ、いくら彼らが粗悪品を回収しようとも、犠牲になる人々は現れる。

街へ菓子を持ち出すことをやめればいいのではないか、と一度は考えたが、これは彼らの生命維持に関わる問題だ。かつ、一般的には顔が割れていない彼らだからこそ、例の粗悪品をばら撒いている謎の人物が『USSS』を名乗って粗悪品のみを世に出す危険性だってある──

一刻も早く出所を割り出さなくてはならなかった。

とはいえ、私の身体にも限界はある。血を抜く量だって一定期間に定められた量以上は採ることを控えている。無理はしたくても出来ないのだ。