奇しくも愛しい【ジョジョの奇妙な冒険】 (ページ10)

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車内にて騒々ページ10

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「花なんか買ってどうするんです？」

ルームミラー越しにこちらを窺うフーゴの眉間には皺が寄っている。これは穏やかではない。

  「デートって訳じゃあなさそうだ」

  まさか “彼女”に送るってんじゃあないだろうな… コツコツとハンドルを祈るように叩く指先からそんなフーゴの思考がありありと伝わってくる。

  Aのことなんかをひと言でも口にしてみろアクセルを思い切り踏み込んでフロントガラスに叩きつけてやる… 奴の頭ん中は、正しくこんな具合だろう。そうに違いない。

ただでさえこないだの一件以来互いに行き違い Aと出会していないフーゴの気は立っている。  

「この薔薇の品種」  

それでもつい口にせずにはいられなかった。

「は？品種？」  

「ダ・フ・ネ」  

口にしてみると何かの合言葉みたいな響きでどうにもむず痒い気分になる。  

「くううううッ！！！」  

感情のままに運転席をドカドカ蹴り上げると完全にキレちまったフーゴは運転席から身を乗り出しその花束を引っ掴むと窓の外へ放り投げてしまった。

突然蛇行し始めた危なっかしい車に対向車線からもフロントガラスに花束を投げつけられた後続者からも非難喝采のクラクションをお見舞いされる始末。

  「あーあ」

 俺の批難がましい呟きにはシカトを決め込んでフーゴは何事も無かったかの様に向き直り運転を続ける。 

一変して、鎮まり返った車内に流れるラジオのMCだけがいやに高いテンションでつまらないことを喋り続けている。