【文スト】福沢諭吉 恋愛集【男主】

愛が一つ　出会い ページ3

福｢…泣くな｣


俺は幼児の涙を拭いた。


｢うぅっ…｣


幼児は俺の手を、小さな両手で掴んだ。


｢いろんなひとが…ぼくをうらぎりもののこだって…っ……いらないこだっていうの…っ｣


福｢…そんな事はない。お前に罪はないのだから｣


｢ぼくはこれからっ、どうやっていきていけばいいの…っ｣


福｢お前は俺の家族になった｣


｢ぇ…｣


福｢お前の両親は、家族は死んだ。引き取り手のないお前を俺が引き取る｣


｢おじ、しゃんが…？｣


幼児は俺を見上げた。


福｢おじさんではない。福沢諭吉だ｣


｢…ふくじゃわ…？｣


福｢福沢だ｣


｢…ふくじゃわしゃん！｣


福｢言えてないぞ。ふくざわ、だ｣


｢ふくじゃわしゃん！｣


福｢…ｸｸｯ｣


自信満々で間違える姿が、愛らしかった。


…きっとこの子は、両親に愛されていたのだろうな…。


福｢俺達はもう家族になったのだが、お前は俺で構わぬか｣


｢うん！｣


福｢…そうか｣


…俺以外でも、こうなるのだろうか…。


それは少し、いやかなり嫌だな。


｢ふくじゃわしゃんにあえて、ぼく、よかった…｣


福｢…そうか｣


…事の発端は、俺なのだがな。


福｢…俺達は家族だ。敬語も、要らぬ｣


｢…わかった！｣


福｢俺の名は福沢だ。福沢さんで呼んではならぬ｣


｢ふくじゃわ…？｣


福｢そうだ。それで良い｣


｢…ふくじゃわ！｣


福｢なんだ？A｣


｢ん〜ふふ｣


Aは嬉しそうに笑い、揺れていた。


…フラワーロックのように。

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