R , 6 ページ8
(真冬side)
嘘だ。何かの嘘だと誰か言ってよ。お願いだから。
どうして、どうして。
──どうして、Aが、こんなふうになってるの。
琉依さんと翔太くんに連れられるまま、Aが入院しているという総合病院に来た。本当は逃げたくてたまらなかったけれど、僕の両腕を掴んだ二人が許してくれなかった。
当たり前だ、僕に逃げる権利なんてない。彼女が苦しんでいたのを知ってるくせに逃げてしまった僕には。
本当に嫌なら無理すんなよ、と言ってくれた琉依さんにぎこちない顔で笑いかけると、決心して病室に入った。
自分の喉がヒュッと嫌な音を立てて、心臓がバクバクとうるさい音を立てるのがわかる。隣にいる翔太くんが、心配したように僕の名前を呼んだけど、それすらろくに耳に入らなかった。
「A…」
それはもう酷かった。まるで人形みたいだと言った琉依さんの表現は本当に正しかった。
彼女の視線は宙をさまよい、口元はきつく閉ざされている。物音にも僕の声にも反応しない。その白く細い腕には点滴がつけられていて、ただぼんやりと宙だけを眺めていた。
「僕の、せいだ…」
堪えきれなくなり目から涙が滴り落ちた。力が抜けて崩れ落ちそうになる。立っていることもままならないほどに。翔太くんが背中をさすってくれたのがまた涙腺に染みて仕方がなかった。
ふいにAがこちらを見た。その目は何も映していないみたいだった。感情は一切篭もっておらず、ただ本当に
「…そうか」
「ごめんなさい…ごめんなさい」
Aの主治医だという先生が部屋に入ってきて、ただひたすら謝った。もうそれしか出来なかった。許してもらえるなんて少しも思っていないけれど、こうでもしていなければ罪悪感に自分が殺されそうだった。
「…君は悪意を持ってAを傷つけようとしたわけじゃないんだろ。顔を見てりゃわかる」
「…え？」
でも、先生は静かにそう言った。詳しいことは何一つ話していないのに、どうしてわかったんだろう。
「君もいろいろとわけがあるんだろうな。まあ、これはただの直感だけどな。…だから、その謝罪は俺じゃなくていつかちゃんと本人にしてやれ」
泣きそうになった。というか堪えきれなくて普通に泣いてしまった。少し呆れたようにため息をついた先生の肩にすがりついて、ただひたすらに泣いた。
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紫音 - 作者さん！頑張って下さい！応援しています。 (2020年4月21日 3時) (
レス) id: f284f93940 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一気に呼んじゃいました…！！続編楽しみにしてまってます！！ (2019年8月5日 0時) (レス) id: 7dea81a844 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ﾊｸ)(プロフ) - とても引き込まれる内容で一気読みしてしまいました。お気に入り失礼します。更新待っています！ (2019年2月27日 14時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
フラン(プロフ) - 続編おめでとうございます！関係ないですがTwitterの方のラブレターで切腹と机拭きのやつ私です← (2018年12月20日 16時) (レス) id: 24d7937625 (このIDを非表示/違反報告)
游 - ずっと、ずっと前から、応援してました...！更新されてるのに気付いて、ついさっき駆けつけました！本当に、更新してくれてありがとうございます！これからも、頑張ってください！ (2018年12月17日 20時) (レス) id: cb81d0bb92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わっふるくりーむ | 作成日時：2018年11月17日 22時
