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「ま、待って」
「そんなすぐに閉まらないから」
ほんの数秒遅れて立ち上がった私は、慌てて整理券を取り車内に入る。
あまりにも自然な流れで乗車したかつ、私が彼の言葉を咀嚼するのに時間を要したせいで、私だけ停留所に残されかけた。
ガラガラの車内だと言うのに、何故かフウマさんの隣に小さくなって腰掛ける。
「きつくねーの。お前に比べて俺はデカイから」
「うん、大丈夫」
「ならいいけど」
フウマさんは肩肘を突いて、車窓に流れていく混ざり合う街並みを見つめている。
その様子をぼんやり見つめていると、ふと視線を戻した彼が「見過ぎ」と笑って私の頬を摘んだ。
それが地味に痛みを持っていて、少しは手加減というものを知れと内心思った。
「いひゃい」
「俺は有料コンテンツなんだよ。じろじろ見た代金だっつーの。安いだろ？」
「フウマさん楽しんでるでしょ」
「あれ？お前は？久々に仕事を忘れて遊べたの、楽しかったんだけど」
その言葉を聞いて心底安堵した。
元は私の我儘の延長線上にあるこの外出は、はじまりからおわりまで私が主体の楽しさだらけで、フウマさんはつまらないのかも知れないと不安な部分もあった。
それがどうだ。
フウマさんは夕陽を背に笑っている。
「楽しかったよ、私も」
2人きりの空気を運ぶバスに揺られながら、気持ちを改めて口にすると、いつもの夕陽すらどこか優しく感じる。
前までの私なら、こんな当たり前の事象を幸せだと言えなかった。
未だに家にある母子手帳が、1人で逃げてきても呪いのようにのしかかり、力の無い私は弱さを売りに夜に溶けることで生きた。
それは幸せではなく、幻であると分かっていて毎晩寂しさを辿ってクラブに入り浸った。
私にも日常を楽しむことが出来る。
フウマさんは再び意識をスマホに向けていて、銀の前髪から覗く瞳は真剣そのものだったので、きっと大事な事をしているのだと気遣い、ただ車の揺れに身を委ねた。
不規則なそれが気持ちよくてふと、無意識に言葉が溢れる。
「きっと"ユキ"も喜んでるなぁ……」
「誰？それ」
フウマさんが無意識な言葉をつついた。
「え？……っと、友達」
「へぇ。友達いるんだな」
「う、ん」
フウマさんの興味はそこで途切れ、またさっきの時間が戻ってくる。
内心安心して、変に汗を掻いた手を握りしめた。
──私の唯一の秘密は、誰にも暴かせてはならないのだ。
続く (更新停止中)
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miU(プロフ) - おかえりなさい！これからの更新楽しみにしています！ (2018年4月25日 7時) (
レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - みうさん» みうさん、ありがとうございます。これからさらに落ち着かなくなるような展開を考えていますので、是非最後までお付き合いくださいませ。 (2018年1月13日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
みう - どきどきして心が落ち着きません！続きを楽しみにしています！ (2018年1月7日 23時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - カグラさん» カグラさん、ありがとうございます。まだまだ序盤ですがこれからも見てくだされば幸いです。 (2018年1月5日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
カグラ(プロフ) - ずっと待ってました！この世界観が好きで更新するたび楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)これからも待ってます！ (2018年1月4日 14時) (レス) id: 55da401ce9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅島 | 作成日時：2017年9月20日 16時
