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扉の前に向かうと、そこにはうっすら目の下にクマを作ったフウマさんがいた。

細身の体に大きめのパーカー姿の彼は、萌え袖のあざとい手で欠伸を隠す。



「起きたんだ」

「はい、オムライス美味しかったです」

「そう。礼ならクックパットに言ってやれ」



ふあ、と間抜けな声を漏らし、柔らかそうなその髪を掻きながらソファーに体を任せた。

欠伸の頻度からして、あまり寝ていないことは容易く想像できるが何をしていたのだろう。

真夜中の仕事といえば、絞られてくる。

ソファーの傍にしゃがみこみ聞いてみる。


「フウマさん」

「ん……?」

「何されてたんですか、あまり寝れてないみたいですけど」

「仕事だよ。あ、お水ではねぇから。それと何かするなら財布、靴入れの上にあるから」



眠気のせいで尻すぼみな返事を最後に、彼は目を閉じて直ぐに寝息を立てる。

仕方ないなと肩を落とし、とりあえず昼夜のための食材を買うことにした。

冷蔵庫の中身と彼の様子を見て、今日の献立を組み立てる。

昨日から着替えていない服に不快感を抱きながら、役割を持たぬ携帯と靴入れの上に置かれた黒革の財布をポケットに入れて外に出た。

どんな季節も夜風は優しくなく、冷たさを装った風に目を伏せて歩いた。

少し歩いた所にスーパーを見つけ、入店すると激安食材のオンパレードだった。



「えっ、豆腐1つ10円!?卵も何これ、有り得ないくらい安いじゃん!」



買い物かごを片手に提げ、品定めしてはその意味も無いくらい次々に商品をかごに入れていく主婦を見て、私もいい加減落ち着いて買い物しようと気を引き締めた。

あまり元気じゃない彼を思い、食欲が無くても食べられるうどんや冷奴、スープなどを頭の中に思い浮かべて買っていく。



「あ、コンソメ忘れてた」



調味料のブースに戻り、コンソメを探す。

直ぐに見つかったがほんの少し私には高いところにあり、指先だけがちらちらぶつかる。

もどかしくて思いきって背伸びした瞬間、誰かが先にコンソメの袋を取って手渡してくれた。



「はい、どうぞ」

「すみません、ありがとうございます」

「いえいえ。……貴女があの方がよく申しておられるアスターですか……ふふ、お綺麗な方」

「え?」

「何でもありません。では、」



アスター。エゾギクのこと。

出会う人出会う人、皆その花の名前を口にする。

その事に首を傾げながら、親切な誰かが去った方向と逆の道に進んだ。

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miU(プロフ) - おかえりなさい!これからの更新楽しみにしています! (2018年4月25日 7時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - みうさん» みうさん、ありがとうございます。これからさらに落ち着かなくなるような展開を考えていますので、是非最後までお付き合いくださいませ。 (2018年1月13日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
みう - どきどきして心が落ち着きません!続きを楽しみにしています! (2018年1月7日 23時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - カグラさん» カグラさん、ありがとうございます。まだまだ序盤ですがこれからも見てくだされば幸いです。 (2018年1月5日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
カグラ(プロフ) - ずっと待ってました!この世界観が好きで更新するたび楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)これからも待ってます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 55da401ce9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅島 | 作成日時:2017年9月20日 16時

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