【◇】銀木犀 6. (ページ20)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:6,469 hit

264話ページ20

･

どいつもこいつもジメジメジメジメ

頭にぶなしめじでもくっつけてんのかと叫びたくなる

Aは百歩譲っていいとして

問題はお前だよ、ヘタレの国のヘタレ王子

Aの親友であり何かと察しのいい藍里は

ジメジメくよくよと迷っている鳴の前に仁王立ちで立っていた

鳴｢今お前の顔見たくないんだけど｣

鳴｢冨田｣

口が悪くて、生意気で、態度がデカい

全てがあの日

言いたかったことを遮った男と一致する

藍里｢は？知らねーし、つーかジメジメしてんなよ梅雨はもうとっくに通り過ぎてんだよ｣

鳴｢はぁ？別にしてねーし、お前の勘違いだし｣

藍里｢そうやってひねくれてるからAに見向きもされないんだよガキンチョ｣

鳴｢あーもー！ムカつく！！｣

机を大きな音が出るくらい強く叩き

勢いよく立ち上がる鳴

Aがいる時は大人しくしているけれど

Aがいないのなら話は別だ

親友だろうがなんだろうが合わないものは合わない

昨日の今日でこれだ

せっかく忘れかけていたというのに

鳴｢お前なんなの！？毎日毎日さぁ！｣

藍里｢別に話したくて話してんじゃないし｣

鳴｢あのね、俺はお前じゃなくてAちゃんと話がしたいんだってば！！｣

ああ言えばこう言うのは互いに同じ

つい大きな声で本音を言うと

藍里は少し目を見開き、目線を落としたと思えば

小さく溜息をつき腰に手を当て呆れた様子で口を開いた

藍里｢今日、Aは休み｣

椅子を引き、さっさと座ってしまう藍里

藍里の背中を見つめぽかんと口を開ける鳴

一瞬何の話をしているのかわからなくなった

やすみ？ヤスミ？休み？休みって……

鳴｢それ本当！？｣

藍里｢うるさ、もう少し声のボリューム落とせ野球部｣

鳴｢え、な、なんで……｣

藍里｢さーね、なんだろうねぇ｣

くるっと後ろを振り向き

慌てる鳴の前で

悪戯に笑みを浮かべる藍里

これは確実に休みの理由を知っている

鳴｢さぁねって……もしかして……昨日のアレのせい？｣

鳴｢でも、だってAちゃんは俺の事……｣

Aが休んだ理由は誰のせいでもない

ただたまたまの出来事なのに

昨日のことがあったせいか鳴は自分のせいでAが休んでしまったのではないかと盛大な勘違いを始めた