華の記憶 �� ページ44
アジーム家の人間として此方に与えられた使命は「影武者」だった
次期当主はカリムの兄さま
その下に何十人もいる弟妹達は、兄さまを支える為に生きなければならない
その事に不満を持つ弟妹や側室は多かったが、此方は喜んでその役を引き受けた
大好きな人の役に立てると思った
何より、母の遺言を守れると思ったのだ
暗殺の絶えない兄さまの影となって刺客を引き受ける日々の中で、大怪我を負う事も少なくなかった
鎖骨から腹にかけて斬られた時は死ぬかと思った
しぶとく生き残ったけど
成り代わる相手は何も兄さまだけではなかった
友好を結ぶ家の令嬢、令息
夕焼けの草原の第二王子の影武者を引き受けた事もある
それも全てアジーム家のため
他家とのコネクションを強めるのも立派な仕事だった
苦でなかったといえば嘘になる
自分を根底から壊し、他人へと作り替える中で着々と此方は自分の事を忘れていった
どれが本当の自分だったか分からぬ事など日常茶飯事だった
そんな時に「気分転換だ」と言って兄さまが外の世界へと連れ出してくれた
二人で歩く街並みは活気づいていて楽しかった
兄さまが買ってくれた屋台のご飯も、綺麗なベールも
最高の思い出
最後を彩る記憶としては申し分ない
「大人しくしろ」
無防備な子供達に目を付けた輩に連れ去られたのはそんな時
奴らの手馴れた動きを見て、此方は自分の最期を悟った
「…何をするつもりだ」
いち早く此方のやろうとしている事に気付いた兄を黙らせ、服を脱ぐ
兄さまに自分の服を着せ、自分は彼のものを
『＿＿＿
小麦色に焼けた肌
お揃いの赤色の瞳
兄さまと此方が兄妹で良かったと心から思った
頭からベールを纏った兄を見て微笑む
これでベールを取らない限り兄さまはAにしか見えない
此方がカリムで、兄さまがA
最期に成り代わる相手が兄さまで良かった
「おら、進め」
男達に急かされ引き摺られるように部屋を後にする
『(…愛しています)』
最期の言葉はちゃんと兄に伝わっただろうか
「おい、こいつ嫡男じゃねぇぞ！！」
それから遠く離れた所で魔力の限界がきて変装が解けた
本当の姿を表した此方に男らが激昂する
それからは一瞬
気付いた時には此方の首と体は離れていた
家から遠いゴミ山
誰かが迎えに来てくれるのを、そこでずっと待っている
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
