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No.30 ページ36

わたしは毒素をばら撒きながら学園を彷徨った

宛はない


学園に閉じ込められているから他に行く所がなかった。ただそれだけ




わたしは厄災。第二と第三の柱を宿す器

今思えば、わたしが学園に来たのは第五の少女に惹かれたからなのかもしれない




ネモは厄災の器として世界を混沌に陥れなければならぬ


現世を彷徨うだけだった幽霊に、体を与えてくれた天使様達に報いる為にも



【それでいい】

〔完全なる覚醒は近い!良いぞ良いぞ!〕


喇叭(ラッパ)を吹き鳴らす天使。わたしに肉体を与えてくださった、終末に顕現す高等存在


お前はニガヨモギだという声が頭の中に反響した



…何か、大切な事を忘れている気がする









「くらえ!」

「あっちに行きなさい!」

「ふな"ぁあ!」

「ちょ、グリム飛び火してる!!」



『う、ぁあ…』



学園を歩いていると、何人もの生徒がわたしを追い立てるように魔法を放ってきた


ネモの放つ毒素は嘔吐や神経麻痺を誘発するものだが、彼らは上手く距離を取りながら攻撃をけしかける





『う、うぅ』


【反撃しろ】

〔殺せ!殺せ!〕


頭の中で天使達の声が響く

その声に応じるように体中に巻きついた苦艾(ニガヨモギ)の葉が鋭いナイフのように彼らを襲った


わたしの意志とは関係なく



『(誰も傷付けたくない…)』

そう思う度、咎めるように苦艾が身体をキツく締め上げた




だが暫くすると、身に宿した厄災の力が弱まったのを自覚した

苦艾の締め付けも弱くなる




【おのれ人間】

〔小賢しい!小賢しい!〕


図書館に入って漸く、わたしはおびき寄せられていたんだと気付いた


恐らく、わたしを弱体化させる結界か何かを張って閉じ込める気だ




【結界を壊せ。覚醒の邪魔だ】

〔破れ!破れ!〕


天使達の声に応えるように手から魔法が放たれる

それが白髪の少年に掠めそうになった所を、隣の黒髪の人が間一髪助けた





「カリム!余所見をするな!」


カリム…?



あぁ、わたしはこの名を知っている

どこで名前を知ったんだっけ





___名前、なんていうんだ?




頭痛に呻いている間にも魔法を沢山ぶつけられた



痛い、痛い…と涙が溢れる

顔まで覆った苦艾に涙が吸われ、彼らはわたしが泣いていることを知る由もない





「っ!」

白髪の少年からペンを向けられる




『ぁ、に…ま』


それが無性に哀しかった


感情の制御が効かなくなる







ピシリと結界の罅割れる音がした

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くらげ - コメント失礼します!2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです!次回作が作られたら速攻で見ます!これからも頑張ってください!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します!全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します!!この前の小説も今回もとても素敵なお話でした!初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください! (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!!!!とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりです‪wこれからも投稿頑張ってください!応援してます! (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年12月25日 18時

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