No.21 ページ24
「お前…その傷跡…」
そう言われわたしは自分の露わになった胸部に視線を落とした
そこにはネモが成り代わった妖精の胸板がある、
はずだった
『これは…』
だがわたしの視線が捉えたのはそれだけではなかった
焼け焦げたシャツ。妖精の白い肌
そしてもう一つ____大きな傷跡
ガンガンと痛む頭をよそに、わたしは鎖骨から腹にかけて斜めに走る傷跡を指先でなぞった
これは妖精のものでは無い
わたしに付けられた裂傷。大事な人を庇って出来た大きな目印
わたしが、わたしであるという証明
『そうだ…』
わたしのユニーク魔法には穴がある
例え姿かたちを模倣しても、それは完璧ではない
身体に刻まれた傷跡までは消えない
だから妖精に成り代わった今も、胸には傷跡が居座ったまま
身を削って他人に成りすます日々の中で、自分を忘れないようにとわたしは事ある毎にこの傷跡を愛でるように撫でていた
どうして今まで忘れていたんだろう
『あ…』
顔を上げる
目の前にはわたしの大好きな人
小麦色に焼けた肌はわたしとお揃いの色
大きく見開かれた瞳の色も、彼と血が繋がっていることを表すかのように、同じガーネットレッド
徐々に妖精の体から本当のネモの姿へと変移していく
…やっと本当の自分を見つけられた
『______
そう呼びかけると彼はピクッと肩を揺らした
困惑気味に寄せられた眉間
わたしに注がれる視線はユラユラと揺れている
『兄さま?』
どうされました?どこか具合でも悪いのですか?
蒼褪める彼が心配になって手を伸ばした
あと少しで触れる距離
「お前は…死んだんじゃ……」
伸ばしかけた腕がピタッと動きを止めた
『え…?』
今、兄さまは何と言った?
『(わたしが……
何故そのような事を言うのです、兄さま
妹の存在を疑うなど。否定するなど
どうしてそのような酷い事を仰るのですか
『此方はここに、生きておりまする』
「でもあいつは…妹はもう……俺の身代わりとして死んだはずだ…!」
身代わり…?
此方はまだ、何か忘れて……
「お前は誰だ」
存在を問われる
『此方は…此方の名は…』
口を開き、ネモの本当の名前を紡ごうとした
その時
【お前はニガヨモギだ】
頭に声が響いた
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くらげ - コメント失礼します!2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです!次回作が作られたら速攻で見ます!これからも頑張ってください!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します!全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します!!この前の小説も今回もとても素敵なお話でした!初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください! (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!!!!とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください!応援してます! (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年12月25日 18時