誰かの記憶 ページ20
(？？？side)
一歳違いの妹と俺の母親は同じじゃない
いわゆる異母兄弟というやつだった
一夫多妻制に
貴族の女性が大半の中、その母親だけは平民だったのだ
実家で行われた宴の余興として雇われた、美しい踊り子
それが妹の母親だ
一夜を共にした父と踊り子の間に生まれた妹とは、俺が八歳の時に初めて出会った
父に認知されぬまま、数年の間を母親と貧しく暮らしていた妹
母親の病死をきっかけに父の援助を求めにやってきた、小さな華
友達だというチビッ子の猿を肩に乗せて、そいつは恭しい態度で俺に頭を下げた
「名前、なんていうんだ？」
そう尋ねた俺に、頭を下げたままそいつは名前を口にする
綺麗な名前だと思った
「アブブ共々よろしくお願いします、
アブブ…小猿の名前だ。俺も妹もアブーと愛称で呼んでいた
妹の従者のような口調に俺は頬を膨らませる
「そんな堅苦しい話し方やめろって！俺達は兄妹なんだから」
そう言っても妹は一度たりとも口調を崩すことはなかった
俺はその度に不貞腐れたけど、今考えると妹は俺よりも自分の立場をしっかりと把握していたんだと分かる
俺よりも年下なのに、しっかりした奴だった
平民出身という身分が周りからどう見られるのか、妹は幼いながらに分かっていたのだ
「卑しい血だ」と周りから蔑まれてもジッと唇を噛んで耐えるような子だった
「ドブネズミが死んだところで悲しむのはお前に
血統主義の人間からそんな誹謗中傷を受けて、妹は悲しそうに眉を寄せて……でも、それだけ
俺が言い返せって諭しても困った様に笑うだけだった
「言い返したところで
自分を卑しい血だとは思いませぬが、血統を重視される方々が此方を蔑視するのも仕方がないこと」
悔しいけれど、言い返してもどうにもならないのです。無意味なのです
諦めた様に笑うと妹は肩に乗せたアブーと寄り添った
「なら俺が守る」
「え…？」
不意に口から零れたのはそんな言葉
俺の本心
「俺は兄貴だから」
小指と小指を絡ませて続けた
「妹を悲しませる奴は、誰が相手だろうと俺がぶっ飛ばしてやる」
約束な
そう言うと妹は嬉しそうに「…はい」と笑うのだった
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
