No.12 ページ14
わたしは震える足を叱咤して、痛む頭を抑えながら呟いた
「わたしは、わたしの本当の名前は……」
あと少し
もう喉まで出かかってる
かかさまに貰った大事な名前
ととさまが美しいと言ってくださった、大切な名前
___名前、なんていうんだ?
大好きな
『そうだ、わたしは…
視界が拓けたような感覚
ゴールの分からない迷路を彷徨っていたところに、突如光が射し込んだような安心感
産まれてから最初に貰った贈り物の名を呟こうと、口を開いた
その時
【お前はニガヨモギだ】
ヒュッと息を呑んだ
誰かが、ナニカが脳内に語りかけてきている
【お前はニガヨモギだ】
高いのか低いのか子供なのか大人なのかも分からぬ声がそう何度もネモに投げ掛ける
『ち、違う…此方は、』
慌てて頭を振って謎の声を追い出そうとする
けれど声は遠ざかるどころかますます勢いを増していった
【お前はニガヨモギだ】
声がそう言う度に頭がぼんやり霞んでいった
思い出しかけた本当の名前が濃い霧の中に消えて行く
『(思い出せたと思ったのに)』
待って、お願い待って
わたしから名前を取り上げないで
ポロポロと、他人の面の皮に自分の涙が伝う
【お前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだお前はニガヨモギだ】
『うぁっ…』
狂いそうな程に脳内で言葉が反響して駆け回った
〔お前は海に星を落とす者だ〕
ネモは思い出した本当の名前の事などすっかり忘れて呆然と呟く
『わたしはニガヨモギ…』
水源に彗星ニガヨモギを落とし、水を毒へと変える者
海に星を落とし、生き物を嬲り殺す者
この世は悪人が増えすぎた
人々に災厄という試練を与え、善性なる者だけを次の時代へと導かなければ
わたしは違う
患難の時をここに。人類に裁きを与える
『だめ…そんなことしたくない…』
ネモは蹲る
呑まれそうになるのを辛うじて堪えると、今の出来事はすっかり記憶の彼方へと消えていった
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くらげ - コメント失礼します!2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです!次回作が作られたら速攻で見ます!これからも頑張ってください!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します!全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します!!この前の小説も今回もとても素敵なお話でした!初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください! (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!!!!とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください!応援してます! (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年12月25日 18時