第309夜 ページ26
(セドリックside)
「A、ほら戻ろう。シリウスさんに見つかるよ」
始業式の朝
自分の準備と合わせ、Aの着替えや荷造りの手伝いに奔走しているといつの間にか部屋から消えていたA
その後を追うと何やら緊張感が漂っていて、僕が目を離したばっかりに…と頭を抱えた
『やだ。もうあそこに用はないじゃん。ね？』
「でも安静にしてないと…」
今は駄々を捏ね始めた彼をどう4階まで誘導するかで頭を悩ませている
『じゃあセドリックの部屋に行こうよ。時間まで一緒にゴブストーンでもしよう？』
「あれは臭うからダメ…」
『じゃあ本。セドリックの読みたい本でいいから、一緒に見よう』
おかしいな…
僕はらしくないAの姿に内心首を傾げる
いつもだったらこんな駄々を…そもそも僕を困らせる様な事は言わないのに
「(もしかして聖水と鎮痛剤が効いてない、とか…)」
その事に思い立ってサッと青ざめる
もしそうなら今すぐにAのホグワーツ行きを止めなければ…
しかし
『セドリック？……ごめん、怒らせた？』
下から見上げられたAの瞳を見て、それは違うと気が付いた
眉を寄せて僕の顔を覗き込んだ蒼の宝石
それはここに来てから一番＿＿＿＿
『セディ…？』
「＿＿＿＿もしかして、浮かれてる？」
一番、輝いていた
『え』
健常時とは比べ物にはならないけど、彼の瞳は汚染に呑まれる様になってから最もキラキラと煌めいていたのだ
「ホグワーツに帰れるって、嬉しくなったの？」
『……』
固まってパッと俯いてしまった年下の少年を優しく下から覗き込む
髪で隠そうとしているが、白銀の糸から覗く陶器の様な肌には赤みが指していた
…そうだ、この子は
「ホグワーツは君の家だから、帰りたいって思うのもふつうの事だ」
今、この子の帰る家はあの城だけだ
袂を分かった肉親
針のむしろの様なブラック家の屋敷
もう彼が心から安らげるのは、きっと…
『……いつの、まにか…』
「うん」
『ホグワーツは、僕にとって……』
その先は空気に溶けて聞こえなかった
けれど彼の言わんとした事は容易に想像できる
「…部屋、戻ろうか」
『……ん』
今度は僕が手を引かずとも、Aは一人で階段を登っていった
「(……どんなに君が変わろうと、)」
一人、心の中で呟く
「(…ホグワーツは君の帰りを待ってるよ)」
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雪乃 - 面白すぎて一気に読んでしまいました…！！話の展開にとてもワクワクしてます！！更新応援してます！ (2021年12月17日 0時) (
レス) id: c79f44231f (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - アロンさん» ありがとうございます…(T_T) 更新頑張ります！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - 卵のたまごさん» ありがとおぉおおおぉおお！！！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！更新待ってます！頑張ってください！ (2021年12月12日 19時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
卵のたまご(プロフ) - 好きだぁぁぁぁぁぁぁ…！！！ (2021年12月7日 22時) (レス) id: d5144cc3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年9月12日 16時
