第297夜 ページ14
それはまるで寄せては返す"波"のような侵略だった
呑み込むように打ち寄せては、気紛れのように引いていく
決まったリズムなどない、ちぐはぐな征服
ふと、気まぐれに戻ってきた意識が最初に感じたのは指先のジン…とした痛みだった
それからジワジワと来る不快な暑さ
ぱたぱたと服を持ち上げ風を送る
けれど僕がいるのは空気の通りが悪い奥の部屋
暑さを逃そうと思っても上手くいかない
涼しい風を求めて扉を開けてしまうのも時間の問題だった
「A、こんな所でどうしたんだい…」
涼を求めて階段で蹲っていると、ふと困惑した声が聞こえてきた
セドリックだ
『……内緒にしてて』
ブラックじゃなくて良かった、と胸を撫で下ろしつつセドリックに釘を刺す
…まぁ、彼ならわざわざ告げ口なんて事しないだろうけど
「お腹空いてないかい？モリーおばさんが夕食を作ってくれたんだ、まだ残ってると思うよ」
彼の口から出た名前に僕は漸く合点がいく
最近騒がしかったのは気の所為でもなんでもなく、ウィーズリー家が騎士団に来ていたからだ
『…いらない』
どうせ吐くし
僕の体はすっかり魔法栄養剤を摂っていた頃の様に異物を受け付けなくなってしまっていた
無理して食べて吐いたりなんてしたら、おばさんも悲しむだろう
というか、今は食事よりも
『……おふろ』
「…風呂？」
『…入りたい』
「……」
困った顔で思案するセドリック
表情を見る限り、僕の希望はすんなり受け入れてもらえなさそうだ
そろそろ拭くだけの処理は遠慮したかったんだけど
「……皆が寝静まった頃に、こっそりなら…」
『…わかった』
苦渋の決断をしてくれたセドリック
もしこの事で責められても彼の名前は絶対に出さないことを決めた
『ごめんね』
「…それは僕のセリフだよ」
そう言ってセドリックは腕を伸ばして僕の頭を撫でようとした
刹那
＿＿＿バシッ！！
「え…」
鋭い音が辺りに響く
『……ぁ』
思わずと言ったように口から声が漏れる
僕は無意識に彼の手を叩き落としていた
『ぁ……ごめんね、今のは無意識で、ただ…ただ僕は君を…』
瞬間、腹の底から湧き出る"ナニカ"
『君の腕、切り落としたくて』
ハッと気付いた時には遅かった
驚いた様に目を見開くセドリック
『…ごめん、戻る』
スッと立ち上がる
そして逃げるように僕はその場を後にした
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雪乃 - 面白すぎて一気に読んでしまいました…！！話の展開にとてもワクワクしてます！！更新応援してます！ (2021年12月17日 0時) (
レス) id: c79f44231f (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - アロンさん» ありがとうございます…(T_T) 更新頑張ります！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - 卵のたまごさん» ありがとおぉおおおぉおお！！！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！更新待ってます！頑張ってください！ (2021年12月12日 19時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
卵のたまご(プロフ) - 好きだぁぁぁぁぁぁぁ…！！！ (2021年12月7日 22時) (レス) id: d5144cc3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年9月12日 16時
