第211夜 ページ25
(ジニーside)
「ジニー、大丈夫…？」
隣から肘でつつかれて漸く私は思考の海から戻ってくる
慌てて隣に向き直ると、いつも仲良くしてくれているグリフィンドールの同級生が心配そうにこちらを覗き込んでいた
「ほんと…、びっくりよね
A･ヘルエレガルに婚約者がいたなんて」
「………」
小声で囁くように言われた言葉に、私は呆然としながら遠くで楽しそうに笑うAを振り返った
そう、笑っているのだ。Aが、とても楽しそうに
彼の視線は、件の婚約者に優しげに向けられている
「A、好きなのかな…」
「…そんなことないって！親が決めた相手だから一応優しくしてるだけだよ！心から好きな訳ない！」
慰めるように言うけど、友人もAの表情を見て彼が婚約者の事をとても大切にしていると理解している筈だ
だって、あんな彼の顔、初めて見た
彼の笑顔はそれなりに見てきたけど、今彼が婚約者に向けているのはそのどれとも違う
周囲の喧騒を掻き分け、Aと婚約者の笑い声が耳に届くような錯覚がした
Aの口にクッキーを押し付ける彼女
それを笑って受け止める彼の視線は、慈愛に満ちていた
お返しと言わんばかりにAが手ずからチョコを食べさせているところで、私は見ていられずパッと視線を逸らした
せっかくのご馳走も、全く味なんて分からない
対抗試合の説明を最後に歓迎会も幕を閉じ、各々興奮冷めやらぬまま大広間をダラダラと出て行く
自分が傷付くだけと分かっていながら、私は懲りずに人混みの中でも目立つ想い人に視線を寄越した
「うわ、見せつけるように腕組んでるじゃん…ヤラシイね」
友人がうげぇと吐く真似をしてそう言った
それは本心からなのか、それとも私を思っての事か
「ていうかなに、あの周りの金魚の糞みたいなヤツら」
言われて私はぼーっと視線を巡らす
Aと婚約者が仲良く腕を組んで佇むその周囲に、友人の言う通り頬を上気させてAに媚を売るボーバトン生が何人か囲んでいた
婚約者の取り巻きだろうか
それにしたって、目の前で媚なんて売るかな普通
「……いいよ、行こ」
私は友人の手を引いて扉に向かった
これ以上は自分に毒だ
扉付近にいたA達の前を俯きがちに横切る
彼に声を掛けてもらうことすらなく、私は大広間を後にした
ポケットの中で、一年前に彼から貰った栞の感触を私は弱々しく確かめるのであった
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三隣亡 - とても面白いです！！これからも頑張ってください！続きを楽しみにしてます！ (2020年12月3日 10時) (
レス) id: 94f806d9d0 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。金曜ロードで、ハリポタが再放送していたので、勢いに乗ってまた読みに来ました。個人的に好きなシリーズが炎のゴブレット編なので、楽しみです。 (2020年11月17日 2時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - オタクさん» その事をジニー達にマウント取ってドヤ顔してる婚約者ちゃんも作者は好き…… (2020年11月13日 16時) (レス) id: 612b09e7e0 (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - 婚約者にベタ惚れ主人公君…好き… (2020年11月10日 14時) (レス) id: 3a06b234dc (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - ハルさん» お父様私も好きなんですよね笑 身内には甘い人ってなんかいいですよね笑 厳しいけど親バカな所あるからねお父様…(ｷｭﾝ) なうでハリポタ見てます！来週ももちろんみます！笑 更新は今書いてる別作品が終わり次第やります！もうしばらくお待ちください…… (2020年10月30日 21時) (レス) id: 612b09e7e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年7月4日 18時
