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恐怖 ページ2

「涙が石になる個性か?」


受け取った石を不思議そうに眺めながら個性の詳細を聞いていく少年に言葉を続ける


「体から宝石を生成する個性です」


両手を自分の胸に数秒当てる。すると、手の中には色のついた石が数個握られていた。


「そんな希少個性なら国が保護してくれるだろ」


その言葉に胸が締め付けられていく…
私もそう思っていたのだから


「私は個性のせいで人生がめちゃくちゃですよ
個性の為に幼い時に両親に売られ、知らない人の為に宝石をいっぱい出して満足したらまた売られる」


恐らく 個性が発現した4歳辺りからそういう人生を送っているのだろうか…本当の名前すら知らない


「物心ついた時には私の名前は「ジェム」として
生きていたの。わかる?宝石って意味だよ」

「……」


少年は一言も喋らずに少女の話を聞いていた。


「…ある日ね 分かったの。
私が生成する宝石より私の血や涙で出来た宝石の方が価値があって高値で売れるって

それからは毎日 暴力の日々だった…
『痛い』『やめて』って言っても誰も助けてくれなかった」


忘れたい記憶が話をするにつれて蘇ってくる。
鮮明に…あの時の感覚を連れてくる。


「恐怖の中でやっと逃げ出すチャンスが来た
見張りの人が鍵を掛けずに居眠りしてた

今なら逃げられるって思って無我夢中で逃げて…」

「それでこんな所まで逃げてきたのか」


大きな箱に私の涙で出来た宝石を入れていく
話している間に泣いていたのだろう…私の足元には沢山の石が転がっている


「てめぇが悪い奴じゃないって分かった
疑って辛い事思い出させて悪かったな…」


箱を隅に置いて少女の頭を撫でる。
その手が暖かくて目が熱くなっていく


「俺の名前は爆豪勝己」

「かつき…さん…」

「呼び捨てでいい」


勝己はドラゴンの元に駆け寄り「こいつは家族」だと教えてくれた。


「後はお前の名前だな」

「私ですか…」

「宝石って呼ばれるの嫌だろ」

「………そうですね」


そう、私は宝石じゃない。
ちゃんとした人間なんです…だから、名前が欲しい


何度も願った事だった。



「…じゃあ、てめぇの名前はAだ」

「Aですか?」

「あ?嫌なのかよ」

「まさか!!」


ちゃんとした名前で呼ばれるのが嬉しかった。
人間として生きることが出来るんだって思えたんだ




与えられた恐怖をこの人なら消してくれる
そんな気がした

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猫太(プロフ) - 黒猫さん» ありがとうございます!出来るだけ早く更新できるように頑張ります! (2017年12月28日 11時) (レス) id: 89a089bb8f (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 更新楽しみに待ってます(*^_^*) (2017年12月26日 22時) (レス) id: 04cf0d7a4d (このIDを非表示/違反報告)
猫太(プロフ) - りんご飴さん» ありがとうございます!お楽しみ頂けるように頑張ります! (2017年12月24日 16時) (レス) id: 89a089bb8f (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴 - 凄いです!EDのやつですね!続き楽しみに待ってます! (2017年12月24日 15時) (レス) id: 65eac10195 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:猫太 | 作成日時:2017年12月21日 13時

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