第八話 ページ10
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図書室を出て角を曲がり、靴箱へと続く廊下を歩いてすぐの事。
「はぁ〜ぁ……。」
と、盛大な溜息を零したかと思えば眉間に皺を寄せて顳かみを軽く抑えた。
理由はと言えばさっきの事である。
「何であんな返事しか出来ないのよ…。」
なんて、先程彼に向けた返事について悔やんだ。
特に悔やむべき部分は、手に持っている本である。
本を渡しに来たというのに、どうて今の彼女が持っているのか。
それは簡単、渡しそびれたからだ。
彼が起きてから今に至るまでの流れはあっという間で、何とも言えない恥ずかしさが今でも消えない。
それほどまでに、緊張もしたし恥ずかしかった。
そんな自分自身に呆れたような溜息をもう一度零し、慣れない事をするものではないと心の底から思う。
明日、教室で渡そう。
そう心に決めた時には下駄箱に着いていた。
それから靴に履き替えて、次は寮へと向かう。
寮は同じ学校の敷地内にあるのでそこまで遠くはないものの、いつも以上にその道のりを早く感じた。
気が付けば既に寮に到着しており、彼から譲ってもらった本をもう一度持ち直す。
一度本に視線を落とせば、彼の綺麗な赤色の瞳が頭に浮かんだ。
あぁ、やっぱり綺麗な瞳だったな…___。
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