第三十二話 ページ34
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格好つけたがる、ね…。
男の人ってみんなそうなのかしら?
ゼノなんてこの前、男の前でも女の前でも格好つけたいって言ってた気がする…。
なんて事を思っていれば、早速彼が練習を始めた。
練習に付き合いたいと言う気持ちはあったが、それをどう伝えていいのかも分からず悩んでいたその時。
脳が何かを認識したと同時に、口が開き声を発する。
「そこ。そこの部分で遅れるから後が遅れるのよ」
そう言って彼の方に歩み寄れば、何の躊躇いもなく彼の手を取った。
先程の動きを、今度は彼女がリードしながら一度口で教えて足を動かす。
その時の自分の行動を後から思い返して恥ずかしくなるのだが、指導者的な気持ちの方が勝り、恥ずかしさを感じていないらしい。
まあ、そのお陰で今は彼の顔を見ながらでも喋れているのだが…。
それから数時間後。
みっちりと、彼女なりのアドバイスを彼に教えながら足を動かし腕を動かし、居残り練習を続けた。
時たま休憩を挟み、休憩中に会話もしたり。
ほとんど本の話だったが、突然彼に対して「貴方、別に格好つけなくても格好良いと思うわよ?」などと、爆弾を落としたりしたもした。
練習中は、何度も何度もステップを繰り返す。
そして、彼が合わせられる位に踊れるようになった頃には、もう周りには誰もおらず2人きりになっていた。
「…この短時間で凄く上達したと思うわ」
最後のステップを終え、彼を見上げながらそう呟く。
それと同時に、彼女の指導者としての気持ちが途切れた。
ぶわっと頬に熱を感じる。
途切れたのをきっかけに、彼女の恥ずかしがり屋スイッチが入った様で、平然を装いながらもとっていた彼の手を離した。
自分から手を取って、何度も何度も踊って…___。
これまでの行動を、言葉を思い返せば、更に熱が頬に集まりそうでなんとかその思考を振り払う。
あぁもう!何してるのよ私は…!
人と交わらないようにしていたのに、彼といるとそれが出来なくなる。
それに、ここに来てゼノ以外の異性とこんなに一緒に居たのは初めてで。
単語ではなく、文章としてまともな会話をしたのもゼノを除けば彼が初めてである。
突然降り注ぐ初めての体験に、そろそろ頭が追いつかなくなってきていた。
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