三十九柱 ページ39
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「はっはっはっは…！」
三日月 宗近様が唐突に笑い出す。
動揺にビクリと肩を揺らした時、鋭い痛みが首に走った。
…ああ、刀を突きつけられていることを忘れていた。
「ああ、首が深く切れてしまったなあ」
上座に腰掛けていた彼は、ゆっくりと立ち上がった。
同じ刀剣男士から一身に受ける視線に動じることなく私の元へと歩み寄ってくる。
反射的に浮き上がりそうになった腰を、無理矢理座布団に縫い付ける。
「ほれ、これをやろう」
「い、え…私めには身に余る物にございます…」
その声とともに差し出されたのは、袂から出された黄色い手拭いだ。
恐れ多いとばかりに、やんわりと受け取れぬことを申し上げる。
ニコ、と笑みを深めた彼は、私の首元に突きつけられていた刀をスイッと退かしてしまう。
「良い、使え」
「…ありがとう、ございます」
有無を言わせない言葉と表情に、引きつりそうになっている表情筋に気づいて引き締める。
それから、私は彼の手に触れぬように、最新の注意を払い、慎重に受け取った。
しかし、言われた通りに使っては血がついて仕舞うと気づき、受け取るだけにとどめる。
「ん？使わぬのか？どれ、ジジイがやってやろう」
「ぉ、気持ちだけ、ちょうだいいたします…！」
「はっはっは、苦しゅうないぞ」
どうするべきかと手拭いを見ていれば、柔軟化した態度で三日月 宗近様は顔を覗き込んでくる。
ぴきん、と固まった私に楽しそうに笑って手を伸ばして来そうなことを察知し、素早く言葉を投げかけた。
少しばかり吃ってしまったが、それを気にできるほど余裕はなかった。
「ふむ。新しい主は随分と面白い童だ」
しかし、三日月 宗近様の言葉で、ついに思考が止まる。
「ぁ、るじ…？」
主、主とは…、刀剣男士の上に立つ審神者を呼ぶために用いられる呼称で。
今の私が呼ばれるなんて有り得ない…はず。
「ああ。俺はお主(ぬし)を主と認めようぞ」
「三日月殿！？一体何を、」
「こりゃあ驚いた。まさか三日月が籠絡されるとは」
私が反応するよりも早く、水色の髪…一期一振様と全身真っ白な…鶴丸 国永様が声を上げる。
ズキズキと頭が悲鳴を上げ始める…キャパシティオーバーだ。
…一体、どこに主人と認められるところがあったっていうんだ。
いや、その前に私のせいで刀剣男士同士が仲を違って仕舞うのでは？
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
