【刀剣乱舞】かの瞳は雄弁に語る。 (ページ36)

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三十六柱ページ36

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「…入るがいい」

入室を促す声にゆっくりと頭をあげ、立ち上がる。

敷居を跨いで入った。

背後には燭台切光忠様がいるので、振り返って襖を締めることはしない。

十数人の刀剣男士は、皆一様にこちらを向いて座っていた。

一番奥の上座にいるのは、声をかけた方で名は確か…三日月宗近様。

天下五剣の一振りで、希少価値が非常に高く、政府が早々にこの本丸を消せない理由だ。

中央に座布団が一枚用意されている。

私の中に緊張の糸がピンと張り詰めた。

敵地の中で指定された場所に座ると言うことは、好きに殺してくれと言っているようなもの。

罠も、暗殺も…間合いも、彼らの思う壺だということだ。

そう考えて、足が止まりそうになるが平静を装い座った。

しかし、そんな一瞬の葛藤でさえお見通しなのだろう。

三日月宗近様の目が、一瞬細められた。

冷や汗が背中を伝う感触を鮮明に感じる。

背後で襖が閉じられた音を聞き、私は再びゆっくりと頭を下げた。

「お初にお目にかかります。この度、この本丸の審神者となるように政府より命を受け、10日ほど前から離れにて生活させていただいておりました。貴方様方にはご挨拶もせず、」

「そんな事を話しにきたのではなかろう？面を上げよ、人の子よ」

「…失礼します」

落ち着け、と心の中で自分に言い聞かせながら上体を起こす。

5年近く鍛え上げたこの無表情の仮面は、滅多なことでは外れない…はずだ。

「本日は、恐れながらも刀剣男士様方に許可をいただきに参った次第でございます。先日、管狐のこんのすけより文を届いたかと思われますが…」

「鍛刀部屋、手入部屋の許可か」

「はい。遅ればせながら、離れに私が住むことも許可していただきたいと思っております」

私の言葉に、ピクリと形の良い眉が動く。

ほう、と三日月宗近様の相槌が耳に入ると同時に、ぶわりと風が首を撫でる。

気がつけば、ぴたりと首に刀が当てられていた。

刀を突きつけているのは、蛍丸様だ。

「帰れるとでも？」

愛らしい容姿を持ちながらも刀身は大太刀で、この場にいる刀剣男士様方の中で一番間合いが遠い。

やはり、座布団で位置を誘導されたのはこういう事を想定していたからだろう。

背後には燭台切光忠様…つまり太刀、前には蛍丸様…つまり大太刀。

…詰んでるな。

そう思いながらも、私は無表情でまっすぐと三日月宗近様を見ていた。