【刀剣乱舞】かの瞳は雄弁に語る。 (ページ30)

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三十柱ページ30

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コツ、コツと私の右手の甲は宙を叩く。

見えない壁が、目の前にあるのだ。

「柔らかく、柔らかく…」

呟いて、また宙を叩く。

そうすれば、パリンと何かが割れる音とともに見えない壁が消えてしまった。

やっぱり、と心のどこかで思いながらも、口からは重いため息がこぼれた。

「また失敗だ…難しいコレ」

ふと障子に目を向ければ、朝日に目がやられる。

コンは隣で穏やかな寝息を立てており、自然と恨めしい声が漏れた。

「さっさと寝て…裏切り者め…」

結界の練習を始めてから、ゆうに8時間は経っている。

初めの1、2時間は良かったのだ…1、2時間は。

薄いながらも結界が張れて、その30分後には申し分ないほどに強化もできた。

範囲を広げるのは少し時間がかかったが、2時間もすれば全身を覆うことのできる大きさで張れるようになった。

しかし、柔軟性の高い結界はいくらイメージしても成功することはなかった。

柔軟性が高いと、柔らかく…とイメージする度に薄い結界が出来上がり、叩けば割れてしまう。

何度繰り返してもできないのは、イメージが不完全だからなのか…。

それとも、柔らかくという言葉自体がいけないのか。

「だめだ、少し間を開けてやろう…」

寝不足特有の倦怠感を体に覚えながらも、ふらふらと離れを出た。

内番業務にすっかり慣れきった体は、意識をせずとも馬の世話に畑の世話にと勝手に動く。

馬の飲み水を変え、ブラッシングをして、藁を変えて。

雑草を抜いて、収穫して、水を撒いて。

気がつけば、朝特有の空気の透明感は消え、日が燦々と照っていた。

構ってくれと言わんばかりに顔を押し付けてくる馬に謝って離れに戻る。

コンの朝ご飯兼昼ご飯を用意して、シャワーを浴びた。

「結界は張ることができましたし、一先ず安心ですね！それでは私めは政府に行って参ります。帰りは夜になりますので、先にご就寝ください」

「うん。いってらっしゃい」

炊いて置いたご飯と味海苔で食事を済ませて、自室として利用している部屋へ戻った。

また結界の練習に精を出しつつ、時折障子の外を気にかける。

そんなことを1時間も続けていれば、だんだんと日の陽気に充てられ始めてしまう。

うとうとと微睡み、起きていなければという意思が緩やかに溶け始めた。

30分だけ、と確証もない言い訳をして瞼をゆっくりと閉じた。