二十八柱 ページ28
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「…顕現、明日にしない？」
「何をおっしゃるのですか！2時間30分の方はともかく、こちらは顕現していただきますよ」
刀置台に置かれた短刀を前に、私は正座をしている。
さあ顕現を、という段階で本当に顕現させて良いものかと迷っているのだ。
鍛刀も、顕現も、母屋にいる彼らに許可を取るべきなのではないのだろうか。
…人間の評価を、更に下げているような気がする。
ジッと一振りの短刀を見つめ、両手を伸ばす。
顕現をすると思ったのだろう、視界の端でコンの表情が明るくなったのを認識する。
「＿＿申し訳ありません。顕現まで、もう暫くお待ち下さいませ」
刀に触れることなく、畳に手をついて頭を下げる。
素っ頓狂なコンの声が響くが、私は何も反応することなく刀置台を端に寄せた。
「なぜにございますか！？審神者様にも味方が必要なのはわかりますでしょう！」
「…これ以上、審神者の価値を下げてどうするの。それにこちらが力をつければつけるほどに彼らの心は離れていくのは明白だよ」
私は机に向き合い、一枚の紙とペンを手に取る。
筆もあったが、上手く書けないためにSanizonで購入しておいたのだ。
記していくのは、勝手に離れを使っている謝罪。
危害を加える気も、場合によっては関わる気も一切ないということ。
鍛刀部屋、手入部屋の使用許可が欲しいこと。
そちらが良ければ、手入れをさせて欲しいこと。
理不尽なものでなければ、そちらの条件を呑むこと。
また、不安に思うようであれば上記の内容を記した契約書を作成すること。
「これを母屋の方へ届けてくれる？」
「審神者様！関わらないというのは…、」
「こんのすけ。これを、届けてくれる？」
何も言わせずに四つ折りにした紙をコンに渡す。
譲らないという気概が伝わったのか、不服そうな表情を浮かべながらも、彼はくるりと宙で一回転して消えた。
…受け入れてもらえるかどうか。
いや、向こうだって刀解は避けたいはずだ。
次回は刀解だと政府に言われたことも、コンは告げるだろう。
「最悪、手入れをさせてくれればいいけど…」
小1時間、待ってみたがコンが帰って来る様子はない。
仕方がないので夕食を作ろうと立ち上がった。
使いっ走りにしてしまったので、お詫びを兼ねて油揚げで何か作ろう。
…攻撃される心配ないって前に言ってたけど、本当に大丈夫だよね？
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
