二十一柱 ページ21
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「審神者様、ご所望のものございます」
「うん、馬にあげといて…」
「な、何故そんなに疲れておられるのですか…」
「私無表情なのによくわかったね…」
「昨日に比べ覇気が全く感じられませんぞ！」
汚れた藁を捨て、今はデッキブラシで床を擦っているのだがそれだけではこんなに疲れないだろうとこんのすけは言いたいのだろう。
当然、この作業に疲れたわけじゃない。
私は、ちらりとある方へ視線を向けた。
「あのお方は…乱 藤四郎でございます」
「乱 藤四郎様…ね。気づいたらそこに隠れててさ…」
「監視というよりも審神者様のことが気になっているご様子ですね」
母屋の破れた障子の戸をほんの少しだけ開けてこちらをジーッと見ている。
私が視線を向ける素振りをすれば、ぴゃっと引っ込んで。
…そしてまた少ししたら覗く、の繰り返しだ。
「あまりにも熱心に見られるものだから、少し気疲れしてしまって」
「お呼びいたしますか？」
「いや、あの方も人間は憎からず思っているだろう。そっとしておく方がいい」
それにしても、刀剣男士は文字通り男しかいないのではなかったのだろうか。
傷だらけの身体を包む衣は、女物にしか見えないが。
「こんのすけ、ここをもう少し綺麗にしたら一度昼ご飯を食べに帰ろう」
「わかりました」
朝方に比べ、日は随分と登っていた。
厩も、あともう少しで綺麗になりそうだ。
午後は馬を洗い、ブラッシングしてあげよう。
「終わったよ、こんのすけ」
「はい！馬も喜んで食べています！」
汚れた手を井戸の水で洗う。
ついでにこんのすけの泥だらけの手足も洗った。
「…見ていらっしゃいますね」
「気にしたら負けだよ。ほら、離れに戻ろう」
相変わらず感じる視線に反応する素振りは見せず、離れに向かって…というより森に向かって歩く。
もしあの方が追って来たとしてもこの結界の前では、悪意は跳ね除けられるらしいし。
追ってこられた時は…追ってこられた時だ。
「流石に、追っては来ないようですね…」
離れに戻ってしばらくしても、こちらへ来る様子はない。
「そう。まあ、簡単には行かないだろうね。それを見越して政府との連絡も絶ったんだし」
「その件、私めはまだ納得して…」
「お昼も油揚げ食べる？」
「いただきます！」
…まあ、いいか。
とりあえず見られているくらいなら、害はないだろうし。
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
