飯田兄弟(飯田 天哉&飯田 天晴) ページ4
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「…天晴、さん」
「…ああ、来てくれたのか。悪いな、こんな姿で」
私の目の前には、車椅子に腰掛けた天晴さんの姿。
そして、車椅子を押す天哉くんの姿があった。
「今、散歩から帰ったところなんだ」
「こんにちは、Aさん」
「…こんにちは、天哉くん。ベットに戻るのかな、私も手伝おうか?」
病院のベットは酷く無機質な白色だった。
横にある策を下ろし、電動式のベットを可能な限り低く下げる。
「…助かる。天哉だけじゃあ、厳しいかもしれないしな!」
「何をいうんだ兄さん!俺だってヒーロー志望なんだからできるさ!」
「まあまあ、私にも手伝わせて欲しいな」
天哉くんが支えているうちに車椅子を手早く退かし、共に支えながら天晴さんの体をベットに横たえる。
その時包帯を巻かれた両足が一切機能していないことに気づいたが、何を言うわけでもなく隠すように布団を掛けた。
「…悪いな天哉、飲み物買って来てくれるか」
「うん、わかったよ兄さん」
天晴さんの言葉通り、天哉くんは病室を出て行く。
ドアの閉まる音が響くのを聞きながらベットの横にあった椅子に腰掛けた。
「足がな…もう動かなくなっちまったんだ」
舞い降りた静寂を切り裂くように言われた言葉に、体が硬直してしまう。
天晴さんは、くしゃりと笑っていた。
「…Aを、助けた事だってあったのにな」
私は、過去に一度インゲニウム…つまり天晴さんにヴィランから助けてもらったことがある。
その直後に私の会社と天晴さんのヒーロー事務所が提携を組み、担当として私が派遣された。
そこで助けていただいた天晴さんと再会し、友人という恐れ多いポジションを頂いてしまったのだ。
さらに紹介された弟の天哉くんとも仲良くさせてもらっていた。
「ヒーロー『インゲニウム』は、死んじまった」
天晴さんは自分の手の甲を目元へ押し付けて、押し殺したような声でそう零した。
ズキリと、心臓が痛む。
咄嗟に彼の手を取って言った。
「死んでなんかない!」
感情が高ぶる。
目の前が涙でぼやける。
「私の中の『インゲニウム』は死んでなんかないよ!」
「…そう言ってくれるのは嬉しいが、でも、」
「世界の誰がインゲニウムを忘れたって、私は忘れない!」
目の前で辛そうに泣いているこの人を、放ってなど置けない。
私が…私が支えないと…!
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零桜 - B組の鱗くんの無害(依存型)が見てみたいです!できれば中国語も少し入れてくれませんか、、、? (8月3日 13時) (レス) @page22 id: 181796d377 (このIDを非表示/違反報告)
ワァ! - オリジン組の人達の奴(個人の奴も)が見てみたいデス! (2021年4月28日 6時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
闇空 - (笑うところ)ってところで本当にわらったらマイパピーからメッチャ心配されましたwwww (2020年4月1日 19時) (レス) id: b30251e94a (このIDを非表示/違反報告)
黄(コウ)(プロフ) - ねじれさんがあることに感動してしまって涙が出てきました。ねじれさんの作品だとかとっても少ないし、こうして短編集でねじれさんが出てくることがあんまりないきがして…。最高でした! (2019年12月30日 13時) (レス) id: 535205595b (このIDを非表示/違反報告)
BT21 - リクエストでオバホールで調教見てみたいです本当にできたらでいいんでお願いします (2019年5月10日 19時) (レス) id: e3d4fbe2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2018年9月19日 16時