この世界線で、全てが終わった後の話。�� ページ20
．
「…は、」
ザワザワと身体中を這い回るような恐怖に目が覚めた。
冷や汗と、グルグルと回る思考。
悲鳴が、頭を木霊する。
ふらりと寝ていたベットを抜け出して、壁伝いにリビングへ向かう。
そこから漏れ出す淡い光に、少し息を吐き出した。
「…顔色が悪いぞ」
「…だい、じょうぶ…水だけ、ちょうだい」
すかさず私を支えてくれた赤井さんは、ソファに座らせて水を手渡してくれた。
それを一口含んで、込み上げてきた吐き気に口を抑えて上体を伏せる。
「ぅ、」
「熱が出ているようだな。吐きそうか？」
「…っ、みんな、ころした…あたまのなか、ひめい、が」
ぐわんぐわんと響く何重もの悲鳴が。
叫ぶ声が、ああ、何もわからない。
どうしよう、飲み込まれ、
「大丈夫だ、ここは静かだ…悲鳴の一つも聞こえやしない」
グイ、と視界が揺れた。
じんわりと身体が暖かくなって、やっとそこで焦点があった気がした。
ぴたりと、悲鳴も消える。
彼の言う通り、何も、いや押し付けられている胸の鼓動以外、聞こえない。
「くるしい」
「…そうか」
「もう、ころしたくないのに、なんどもゆめのなかで、ころすの」
「ああ」
「じんがね、『いちどめ』のときいうんだ、わたしに。『おまえはおれたちもころすんだな』って」
「…」
「『おまえはけっきょくこわすことしかできないんだ』って」
ジンは私を心底哀れであるかのように見て、消えた。
お前は死ぬまで俺たちと同類だと、笑って。
「…その通りだと、思ったよ」
私は、笑った。
きっと自分に哀れみを込めた、あの時のジンのように。
「夢の中で何度も何度も殺すよ。殺さないという選択だってあるはずなのに」
「…よく、そういう夢を見るのか」
「『一度目』の時からずっと…もう慣れたと思ったんだけど、最近…色々あり過ぎた」
私のためを思って涙を零す降谷さんに。
苦しそうに私を見つめる翠川さんに。
「…もう許して欲しい」
「何をだ？」
「壊さないこと事を、苦しみから逃げる事を、自分を許す事を…死ぬ事を、ゆるしてほしい」
ぼろりと涙が溢れる。
苦しくて、もう生きていたくないのに、この人達は許してくれない。
「…俺を呼べばいい。悲鳴が聞こえた時は、悲鳴などない事を気づかせてやろう。
苦しい時は、それが流れるまで俺が涙を拭ってやろう。
自分が許せない時には、俺が許してやろう。だが、死ぬことだけは許せないな」
この世界線で、全てが終わった後の話。��→←この世界線で、全てが終わった後の話。��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 507人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さち - おもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年5月22日 0時) (
レス) id: 43b8d3401a (このIDを非表示/違反報告)
Blanche*(プロフ) - 思わず泣いてしまった....... 続きが気になります!! 無理のない範囲で頑張って下さい!!!!!! 応援しております!!!!!! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 5327bf9003 (このIDを非表示/違反報告)
ナシ(プロフ) - コメント失礼します！おもしろいし、感動して何度も泣いてしまいました。続き気になります！更新頑張ってください！！ (2019年5月21日 18時) (レス) id: 9c83a487c9 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - めっちゃ面白いです！！ほんとに！！更新楽しみにしてます！ (2019年4月4日 14時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 大好きで何回も何回も読み直してます！！更新待ってます！！ (2018年9月27日 7時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2018年3月24日 0時
