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「これはどうです?」
あれからフェージャは幾つか洋服をピックアップしてきた。
どれもワンピースタイプやロングスカートの物で、彼の趣味が窺える。
花柄のもの、チェックのもの。ストライプもあった。
「フェージャが選んでよ」
「では……こちらを」
フェージャはそう言って白いヒラヒラのブラウスと青いロングスカートを持ってきた。
「じゃあそれにする」
「手伝いましょうか?」
「結構です!」
この会話前にもあったような……
ともかく、フェージャに後ろを向いてもらって私は着替えた。
布の質感は滑らかで、高級品なのがわかる。
やがて着替え終わると、フェージャが小物を持ってきた。
「座ってください、ぼくがやりますよ」
ドレッサーの前の椅子に座ると、フェージャが私の髪をいじり始めた。
器用なフェージャによって私の髪はみるみる結い上げられていく。
優しい手つきに心が高鳴った。
鏡越しに彼を見ると、彼は愉しそうに目を細めながら私の髪を結っていた。
ふと鏡越しに目が合う。
私は慌てて目を逸らした。フェージャがくすくすと笑う。
「できましたよ」
いつのまにか私の髪の毛は編み込みがなされ、低い位置でお団子にまとめられていた。
髪留めには大きな青いリボンが施された。
「フェージャ器用だよね……」
「貴女が不器用すぎるんですよ」
りんごも剥けないほど不器用とは、矢張りぼくなしでは生きていけませんね、とフェージャは肩をすくめていたずらっ子のように笑った。
覚えていたらしい。否、フェージャの記憶力で忘れたは無理があるか。
私は澁澤龍彦と太宰治との会合を思い出した。
私が不器用なのは否定できない事実なので押し黙る。と、フェージャが私の手を取った。
「行きますか」
目的地は近くのカフェ。私が以前調べて気になっていたところだ。
何でも、名物は生クリームたっぷりのパンケーキ。カフェラテも注文した。
フェージャは安定の紅茶と、サンドウィッチを頼んでいた。
「美味しい〜!」
「それは何よりです」
フェージャが優しく微笑んでくれたので微笑み返す。
アジトの食事は美味しいが、外で食べる食事もたまには良いものだ。
ふと、フェージャが私の顔をじっと見つめるので不思議に思った。が、すぐにハッとし、素早く唇の周りのクリームを舐めた。
危ない危ない。
もしこのまま生クリームがついたことに気づけなかったら……
彼は内外お構いなしに私のクリームを食べていたに違いない。
そんなのは一生の恥だ。

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ぷりん(プロフ) - ありがとうございます!! (2024年1月28日 23時) (レス) id: 3b75b2ea0e (このIDを非表示/違反報告)
匿名N - ( `ᾥ´ )クッ内容が神すぎる! (2024年1月20日 14時) (レス) @page20 id: b34786daa2 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - そんな嬉しいコメント下さる皆様が神なのじゃあああ!! コメント、ありがとうございます!今から更新します笑 (2023年10月29日 23時) (レス) id: b4f424253f (このIDを非表示/違反報告)
らっきー☆ - めちゃくちゃ最高な作品じゃあああ!!作者様、神ですか!?神ですね…。ドスくんかっこいいですし、作者様の文才も素晴らしいですし、、、幸せだー!!この作品作ってくれて有難うございます!!本当に! (2023年10月29日 16時) (レス) @page13 id: 65de01f0a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - 主とドス君の日常……書いてみます! (2023年10月9日 18時) (レス) id: d1167c1fd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷりん | 作成日時:2023年9月27日 22時