背中にあった翼はどこにもなくて…。【男主】

1歩目 ページ2

｢貴陵ー！

お前の後輩来てるぞー。｣


…。後輩…??
龍やノヤっさんとか、先輩達は、おれにバレー部に戻らないかと声をかけに来るが…
といっても2週間ほど前まで入院してたし。

まず、
おれに後輩はいない。
おれはバレー部を辞めた。1年の時に。







あれはいつの事だったのだろう？


飛べない、その感覚だけが強く残っている。




教室の入口には、オレンジ色の髪のちびと黒髪の目つきが悪い奴がいた。

見かけたこともないから、

たぶん入学してきた1年だろう。

A｢おれになんかよーか??｣
ちびはちょっとおれにひびっていた。
そんな怖いかな…。

影山｢烏野バレー部の1年、影山飛雄っす。｣
日向｢お、同じく日向翔陽です！｣
A｢おー。やっぱ、1年か。
おれは貴陵 Aだ。｣
影山…たしか、かなりトスが上手いヤツだったよな。
こいつにトスあげてもらいてー

日向｢Aさん！バレー部に戻ってきてください！｣




A｢っ…ごめん。

おれは戻らない。｣

日向｢!?

なんでですか!?｣

A｢もう、飛べない。


飛んできた感覚が無くなって、飛べなかった感覚だけが





…この手に残ってるんだ。｣
おれは目をあわせているのがつらくなり、下を向いた。

影山｢あの、バレー嫌いですか？｣
A｢!?(…そんなことない！バレーを嫌いになったことなんてあるわけねーだろ。)｣

影山(この人、バレーが嫌いなわけじゃねぇ。)

｢もうすぐチャイム鳴るぞー。席つけー。｣
先生が教室に入ってきた。

影山｢おい、もう行くぞ！失礼します。｣
日向｢…。あ、おう。失礼します！｣
そう言って、2人は帰っていった。

おれは、その2人の後ろ姿を見て、とても胸が苦しくなった。
嫌な記憶がフラッシュバックする。


A｢…どーやって飛べばいいんだよ…。｣

胸が痛くて学ランをクシャっと握りしめた。

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