・ ページ33
「あ、そうそう、聞いてくださいよ帆乃花さん、――」
ササキ君はどうやら担当の子と新曲について揉めているらしい。
恋愛曲で王道アイドル曲を推すマネージャーと、ヒップホップ系で変わり種曲を推すアイドル。
「んー、難しい話だね」
「せっかく安定してきているのに急に方向性を変えるだなんて、全く……」
「本人はなんて？ 」
「このままじゃダメだから！って一点張りですよ」
安定を取るか、賭けに出て現代ブームの先駆けになるか。
「ササキ君はどうして反対なの？ 」
「そりゃ、ようやくここまでやってきたのに一瞬で水の泡になるようなこと、やらせるわけが無いでしょう」
うーむ。
「私がどうしてマネージャーになったか知ってる？ 」
「え、……万葵さんがいたから、ですかね？ 」
「そう。逆を言えば、たったそれだけで全てを投げ出してここに来たの」
下手したら人生めちゃくちゃ。ADという仕事にとっくにありつけていたのに、思い立ったその日に退職してマネージャーを目指したなんて大馬鹿者のすることだと思う。
「今の私が成功してるかどうかは分からないけど、何かを成し遂げるには何かしら行動を起こさなきゃいけないよ」
「は、はぁ……」
「貴方が興味津々な“万葵”も、弟のためだけにここに来たんだから」
私たち、意外と似た者同士なバディってこと。
「……成功する確証なんて、どこにもないですよね」
「そうだね」
「そんな、一歩踏み外したらバッドエンド真っ逆さまみたいなこと、」
「バッドエンドでも本人たちが満足するなら、それはもうハッピーエンドでしょ」
エンディングの名前を決めるのは視聴者側。そんな名ばかりの感情表現に流される必要なんて本人たちには必要ない。
要するにその先に未来があるかどうかが大切で、例え失敗したとしてもそこから立て直せるかが肝心だ。それには根性が一番と言っていいほど必要。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 551人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 22時
