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「……この時期になるとさ、色々と思い出すの。高校の記憶とか、大学の記憶とか。」
「…………うん」
「ずっとね、気にしてないつもりだったんだけどさ、やっぱり悔しいんだよね。こればっかりはどうやって昇華すればいいのか、いつまでもわかんないの。」
阿部ちゃんの大学進学についての相談はよく受けていた。私としては自分のやりたいことを貫くべきって考えだったけど、グループでの活動となると話は別。ただただ話を聞いてやることしかできてなかった。それに、その時にはもう、私は大学を辞めてたから。
「大学受験は一般で受けたの。どうしてもデッサンで受験したかったからさ。」
「翔太から聞いてたよ。画塾に朝早くから毎日行って、遅くに帰ってくる生活をしてるって。」
「んふふ、そうなんだ。……私ね、何をするにもコネを使ってるだとか、“万葵”だから当たり前だろ、とかってよく言われてたから、尚更ムキになっちゃって、」
クラスメイトから突然言われた言葉。「女優ってだけで何でも上手くいって羨ましい」。面と向かって言われたのは初めてだったけど、影でコソコソ言われてたのは知ってたからもう何も思わなかった。
「結局その弊害で、大学を辞めるまでファンの存在が怖かったし、プライベートで話しかける度に身構えるようになってた。……自分でも最低だと思う。」
イジメというか、イジワルは卒業まで続いてた。怪我をさせてくるとか、物を壊すとかいうのは無く、ただ私を白い目で見てくるだけ。幸いなことに、ちゃんと
「大学のころは、また帆乃花と定期的に会うようになって、話をよく聞いてもらってた。なにかする訳でもなく、ただ話を聞いてくれてたから、その空気感が何よりも落ち着くの。」
高校は同じだったけど、私が途中でコースを変えたから少し疎遠になった。帆乃花が目をつけられないよう、私が話しかけるのを控えてたのもあると思う。アイドルの姉だとバレるのは、プライベートが消えるのと同じようなものだから。
「でもさ〜、……辞めたくなかったよ、大学、」
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
