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「そう考えると大野くんにもお世話になったな」
「大野“くん”？ 」
「あー……それはね、」
彼と共演したのは、ちょうど大学で二回生になった頃。言い換えると、マネージャーが進路に口を出すようになった時期だ。
消えたはずのパワハラ男の言いなりになるマネージャーへのイライラが積もりに積もって、初めての反抗期がやってきた。ハタチで反抗期なんて遅いしダサい。私の中の立派な黒歴史だ。
「それで、生意気だった私はいきなりそう呼んだの」
「随分と勇気があったんだね」
「勇気っていうか、叱ってくれる人をただ求めてただけ」
マネージャーは宥めることしかしてこない。
共演者といえどもただの他人。そんな私に前のめりで絡んでくる人なんていない。
周囲のスタッフは私を大人として扱って、チヤホヤばっかりしてくる。
全部環境のせいだとは言わない。吐き出す方法を青春で教わってこなかった私がわるいんだから。
ただ遠慮なしに止めてくれる人を探してたってだけで。
「その時のストレス発散は踊ることだったの」
「あぁ、稽古場でよくやってた？ 」
「そう。でもその時は稽古場なんて行けなかったからさ、早めに楽屋に行ってそこで踊ってた」
イヤホンをつけて、音は耳が壊れない程度に大きめ。そうして目を瞑って自分の世界に入るのが日課だった。
「楽屋に誰かが来る時はマネージャーが教えてくれてたんだけど、その日アイツはいなかったから気づけなかった」
大方、どっかのアソビ場に行ってたんだろうけど。
「気づいたら大野くんがいて」
がむしゃらに踊り狂っていたところを見られた恥ずかしさと、失礼をしてしまった焦りでぐちゃぐちゃ。
「“やっぱり”、って言われた」
主題歌を一度試聴させてもらったとき、リズムの取り方がまるでダンサーだったからって。
なんやそれ
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
