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「どうしてそんな、私にこだわるの？ 」
「……Aちゃんに自信を持って欲しくて」
「自信？ 」
「Aちゃん、お芝居以外になると、いつも自分のことを卑下して相手を立ててるでしょ。無意識だと思うんだけど」
「それが俺、嫌なの」
女々しい佐久間くん。だんだん視線も下がっている。まるで、叱られてる子どもみたいに。
「さっくん、私怒ってるわけじゃないよ。ただ、何も分からない私には務まらないというか、」
「俺も初めてだからいーよ。二人で一緒に調べよ。」
「…………ちょっと時間をちょうだい」
きゅるきゅるの目でじっと見つめられてしまっては断る気が薄れていく。流されて決断することはいつだって危険ということは身に染みてるのでひとまず時間を貰うことにした。佐久間くんは終始嬉しそうで余計に断りずらくなってしまったのだけど。
「それで持ち帰ってきたと」
「そう」
「いーじゃん。やれば？ 」
相談がある、と帆乃花の家に転がり込んで佐久間くんの話を丸々話した。
「そんな簡単に、」
「何事もチャレンジでしょ。何がそんなに怖いの？ 逆に。」
「ド素人がアイドルのイヤモニをデザインするって大問題じゃん…」
「そんなの同じアイドルに頼んでる子もいるしそれとさほど変わんないじゃん。むしろAに頼む方がそれらしいけど。」
なんでも挑戦する帆乃花は当然賛成派。私の感じる不安要素を片っ端から切り捨てていっている。
「そもそも女優ってことだけでヤバいでしょ」
「じゃあ名義を変えたら？ 万葵Aってバレないような名義。」
今後絵に関する仕事も来るかもしれないからいい機会じゃん、と私のみかんを貪りながら話す帆乃花。一理しかない。
「依頼の受け答えとかわかんないよ……」
「スノのマネージャーに聞いてみたら？ そーいうの経験してそうじゃない？ 」
「うわー、もう逃げ道がない…………」
仕事になると頭の回転が意味わかんないくらい早くなるの、おかしいって。
「佐久間はさ、お前に自信を持ってほしいってのもあるけど、一番はお前の絵を他の人にも知って欲しいんだと思うよ」
「ラウ達がAの絵を褒めたあの日、佐久間達めっちゃ悔しがってた。臆病にならずにもっと早く俺らが言ってあげるべきだったって。」
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
