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「てか、お前いつまでその呼び方なの？ 」
「なに急に」
「“Aちゃん”ってやつ。前は呼び捨てだったろ」
藪から棒に。話がからりと変わりすぎ。
「いつどこで誰が聞いてるか分からないし、念の為にね」
「ただの幼なじみなのに」
「この業界じゃそんなの通用しないんだよ」
満足したのか、大きな欠伸をしながら布団に戻った翔太。機嫌は良かったみたいで、多少言葉を選ばなくても噛みつかれることは無かった。いや、機嫌が良いのか呆れられているのか、本人にしか分からないのだけど。
「お、終わった？ 」
「まだだよ」
「え、いくつ作るつもりなの」
「4個くらい」
「多……」
ベーコンと春菊の和風スープ
鶏ひき肉とキャベツのトマトスープ
オニオングラタンスープ
焼きナスのポタージュ
辛いのが苦手だから和風と洋風のスープだけ。具だくさんにしても美味しいものを選んだ。スープだけでもある程度のスタミナを取れるように。
「私何すればいい？ 」
「そっちの出来上がってるやつを小分けの容器に入れて氷水につけといて」
「氷水？ 」
「粗熱をとらなきゃだから」
近くのコンビニで買ってきておいた氷の出番。ここは俺の家じゃないから勝手に氷を大量消費するのはあまり良くないと思って、買い出しのついでに買っておいた。
他人に食べてもらう料理だから衛生処理は念入りに。粗熱をちゃんととって冷凍庫につめこんでいく。
「すごいね、涼太」
「……何？ 」
「これを毎日やってたんでしょ」
「ただ具材を煮込むだけだから、別に」
「それでも、……私には出来そうにもないな、」
まただ。また、そんな顔をする。
「帆乃だって毎日そばで支えてるでしょ」
「……ただ見てるだけだよ」
帆乃はAちゃんのことになるととことん弱気になる。それを本人とAちゃんは知らないことが状況を悪化させた。
帆乃は痛ましく見える空元気を身にまとい、Aちゃんはそんな帆乃に安心を覚える。そんな構図が俺らの知らない間に完成されていた。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
