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「……また料理？」
「あ、起こしちゃってごめん、帆乃」
電気を最小まで抑えたり、金属音が鳴らないように木製のまな板を使ったりしていたけど、やっぱり起こしてしまったみたいで。眠たげな目を擦る帆乃がキッチンのすぐそこまでやってきていた。
「いや、トイレに行こうと思って」
「そっか」
「……洗い物私やるから」
俺からの返事を待つ前にリビングから出ていった。
……そんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「全部背負い込むなよ……」
「それ、お前が言えるセリフ？ 」
あ、翔太、起きてたんだ。
「ほんとお前ら姉弟、そっくり」
「え？ 」
「隠すの下手なのにすぐ隠し事したがる」
グツグツ。コトコト。
「どーせ、“内緒にして。”とか言われたんだろ、姉ちゃんに」
「……翔太たちも似てるよ」
「そりゃ家族だからな」
浮かんできた灰汁をとって、もう少し火にかける。じっくり、じっくり、野菜がトロットロになるまで。
「前怒られてたじゃん、我慢強いだけじゃダメって」
「あぁ……うん、そうだね」
「涼太はいま何したいの？ 」
ご飯が食べられてない理由を知りたい。
どうして嘘をついたのか知りたい。
「
「AちゃんにはAちゃんなりのペースがあるんだよ」
「聞くだけなら変わんねーだろ」
Aちゃんも翔太と同じくらいに繊細な人柄で、大切に触ってやらないと砕けてしまうくらいに儚い。どうして？と投げかけてしまえば最後、たちまち彼女のペースメーカーはグルっと狂ってしまう。だから俺らは待つことしかできない。
「それができるのは翔太だけ」
「幼なじみでも？ 」
「一緒にいる時間が長いだけで、所詮は……他人だから」
何も考えずにストレートを投げ入れられる特権は他人以上の人だけ。幼なじみにもその特権が通用するのなら、さっきの夕食のご飯を山盛りにしたし、帆乃は無理やりにでもロケ弁を食わせていただろう。
それに、帆乃だってあんなに申し訳なさそうな顔をしたりしないはずだ。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
