お願い、早く私の首を切って [完]

17話 ページ19

煉獄視点



ようやく会えた


まず何を言ってやろうか


何処にいたんだ？ 何故連絡をくれない？
千寿郎も俺も鬼殺隊の柱達もお前を心配していたんだぞ と


そのような言葉をお前にぶつけて


最後はお前を抱き締めてやり頭を撫でる



そして「無事で良かった」と言ってやるはずだった




だがそれは叶わなかった



久方ぶりに会ったお前は鬼になっていた


何故だ？ 何故お前は鬼になっているんだ？


こんな残酷な現実を俺はなかなか受け止められなかった


信じたくなかった


ついひと月前は俺の横で何事もなく笑っていた筈なのに

今目の前にいるAは人を喰らう鬼と化してしまうなんて


俺はこれっぽちも想像もしていなかった







「わた、しの、頸を、斬って」


鬼になってしまったせいかAはおぼつかない言葉で俺にそう言ってきた



Aはもう沢山の人を喰ってきている


Aは正真正銘の鬼だ



頸を斬らなくてはいけない


俺がAの頸を斬らなくては


頭ではそう分かっている筈なのに俺の手は腰に差している刀に手が伸びない


脳裏に浮かぶのはAの鬼になる前の記憶


あぁ、俺はAの頸を斬ることなんてーーー





「A、、っ」



気付けば俺はAを抱き締めていた


Aをもう離すまいと腕に力を込める



離したくない もうお前と離れたくない



目の奥が熱くなり涙がボロボロと溢れ抱き締めていたAの肩に染みを作った

18話→←16話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す