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「A?」


「……何」


「あれ、機嫌悪い?」


「何で?」


「いや、俺が聞いてる」


「別に、悪くない」


「じゃあ怒ってる?」


「怒ってない」


「じゃあどーした?」


「……いや、なんか……」


「うん?」


「相性いいとか言われても……」


「……そっか、覚えてないのか!」



そうだった!って一人納得した彼。
恥ずかしいなぁ、なんて思っていると



「A」



って優しい声で呼ばれる。
彼の顔を見ると、ちゅっと触れるだけのキス。



「思い出させてあげる」



彼が妖しく笑って、返事をする暇もなくまた唇が重なる。
舌が唇を割って入ってくる。
逃げる舌に、追いかけてきた彼の舌が絡む。
絡ませ方も、舌を強く吸われる感じも、タイミングが合うのかな?
確かにすごく気持ち良くて、頭の芯が痺れる。
ゆっくり唇が離れて、彼と目が合う。



「ね? 気持ちいいでしょ?」



うん、気持ちいい。
今までぶっちぎりで一番、って言う彼の気持ちわかる。
でもそう口にするのは恥ずかしくて。
ぎゅっと彼の服の裾を掴む。



「……Aってさ」


「……何?」


「可愛いよな、ほんと」



そう言って私の額にちゅっとキスをする。



「そんな顔でそーゆーこと、男にしちゃダメだよ?」


「……なんで?」


「オオカミさんに食べられちゃうよ? 俺みたいな」



彼は笑って、躊躇することなく私を抱き上げる。
初めてされたよ、お姫様抱っこ。
恋愛ドラマや映画の世界ではよく見るけど、現実世界でされることなんてそうそうあるもんじゃない……と思う。



「っちょ!?」


「やっぱA軽いな。もっと食わせなきゃ」


「降ろしてよ!」


「ベッドに着いたらね?」



私を軽々と持ち上げた彼は、ソファーのままがよかった? なんて笑いながら寝室へ足を運ぶ。
今朝離れたばかりのベッドにゆっくり降ろされると、再び彼と唇が重なる。
真っ暗な部屋に、カーテンの隙間から微かに月明かりが差し込む。
唇が離れて、ぼんやりと浮かび上がる彼の表情があまりに妖艶でカッコ良くて。



「言ったでしょ? 思い出させてあげるって。」



耳元で囁かれる彼の声に、まるで身体中に電気が走るような、でもふわふわしたような不思議な感覚が襲う。
もう彼に抵抗する気力も、反論する言葉も残っていなくて。
小さく頷くと、



「次は忘れんなよ?」



と彼はまた優しく微笑んだ。

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作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:リオ | 作成日時:2018年9月5日 19時

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