この恋、出会いは覚えておりません (ページ18)

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「ただいまー」

「お邪魔します……」

結局あの後、いろいろと押し問答した結果。
ご飯は彼の知り合いの店で食べる。
泊まるのは彼の家、となった。

泊まるのはちょっと……と渋ったんだけど、結局言い包められて。
彼は明日仕事だから、仕事に行きやすい、準備しやすいようにってことで彼の家に。
着替えとかメイク道具とか、お泊りに必要な物をバッグに入れて。
彼が見たいって言ってたDVDもついでに入れておこう。
そして私は戻ってきました。
もう二度と来ることはないと思っていた彼の家に。

「荷物はその辺に置いておいて。あとは適当にしててよ」

「うん、ありがとう」

これ片付けてくるわー、と彼はスーパーの袋を持ってキッチンへ向かう。
晩ご飯を食べて、ここに来るまでにスーパーに寄ってもらった。
今朝、冷蔵庫に何もないと言ってたから
飲み物や明日の朝ご飯の材料を買ってきた。

荷物を置いてソファに座って、ぼーっとさっきまでのことを思い出す。
彼の知り合いのお店のご飯美味しかった。
御馳走になっちゃって申し訳ないな。

泊めてもらうし、朝ご飯だけでも作らせて！ってお願いしたのは私なのに、スーパーのお金も彼が出してくれた。
いい人だな。
ちょっと強引だけど。

「どした？」

「ん？」

「疲れた？」

「ううん、ちょっとぼーっとしてただけ。」

「そっか」

そう言って、さっき買ったペットボトルのお茶とグラスをテーブルに置いてくれる。

「ありがとう」

敬語はやめた。
と言うより、やめさせられた。

「敬語で話すなら返事しない！」

なんて子供みたいなことを言ってくるから。
その後、本当に敬語だと返事してくれなかった。

なんだか今日一日で、随分彼の印象が変わった。
TVで見てたときはもっとクールというか落ち着いた、カッコイイ感じの人だと思っていたのに。
実際はちょっと強引で子供みたいな可愛いところもあって。
でもやっぱり一つひとつの仕草や、ふとした瞬間はカッコよくて。
だからこそ思うんだ。

なんでこの人はこんなに私に構ってくるんだろう。