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「水月も、教えて、くれれば、良かった、のに」口調は変わらぬままで矛先がこちらに向いた。
とりあえず謝った後で、でも、と事情を説明すると、小さくため息をつかれる。何に対してのため息かよくわからないが、神無月は少し考え込んでから暁の方を見上げた。

「もう、こんなこと、しないでよ。びっくり、する。それから、水月も、暁の、言うこと、聞かなくて、いい」

暁を軽く睨んだ後、こちらを向いてひとえに言い終えた。
再びため息をつく神無月の、次の言葉を無言で待つ。
やがて俯いた顔をあげて暁の方に向けた。

「暁、土寮の、テーブルに、戻る?それとも、ここ、座る?」

予想外の穏やかな口調とその問いに、拍子抜けしたのだろう、暁は疲れたような声でじゃあお邪魔するよ、と返した。
大幅に空けていた隣とのスペースを一人分詰めて、暁が座った。
そのまま他愛ない会話を続け、宴も4分の3くらいが過ぎたとき、突如、スペースを空けていたはずの隣の女子生徒がすぐ横に来て、話しかけてきた。

「あ、ねぇ、水月さんでしょ?で、隣が神無月くん?」

「え、あ、はい――」

「みっちゃん、さっきからそればっかりじゃん」

横から会話に入ってきた暁に、うるさい、と焦りながら返すと、横の女子生徒も、そうよ、と続ける。

「暁、あんたは黙っててよ。っていうか、何でここにいるのよ?」

「んー?水月と神無月ってどんなやつかなーって思ってふらっと来て、話してたの。で、ちょっと前にかんちゃんに戻るか留まるか訊かれたから、ここにいるって訳」

「あっそ。とにかく、あんたは黙ってて。それが無理なら土寮のテーブルに帰れ」

反省していない様子でへーい、と返す暁は神無月に話しかけている。執筆中の神無月に疎ましがられながらも絡み続けるこいつは、馬鹿だと言うべきなのか、健気だと言うべきなのか、はたまた、どちらも違うのか。

すぐそばのため息には笑いが含まれていた。
苦笑、失笑、含み笑い、微笑、どれでもなく、どれでもあるのだろう。
そのため息の主はそのままで続ける。
「やっぱり、あいつは変わらないな」それはきっと、良い意味で。
不変のものなんて無いと信じられる世の中で、原形であり続けるのには、どれ程の勇気と強さが必要なのかなんて、知らない。それ以外に何が必要なのかだって。
そんなに計り知れないものがあったのか。
それでも、きっと、どうだって良い。
明日になればもう忘れるから。

考えるのにだって、無意識に意味を求めていた。

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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時

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